大田蜀山人《書の力 第2回》

書の力

大田蜀山人 筆   鍬形蕙斎 画

大田蜀山人(1749-1823)は官僚として活躍するとともに人気狂歌師としても有名で、江戸の文化人として知られていました。下絵の扁舟と桃花を描いた鍬形蕙斎(北尾政美/1761-1824)も浮世絵師として広く知られた人物です。彼らは親しく交友しました。この作を揮毫した年に蜀山人は古稀を迎えます。老境ではありますが蜀山人は自ら70歳を祝い、さらに活発な活動をしていくのです。軽やかな筆致と淡彩の下絵とが相まった華やかな作品です。3月3日、今日は桃の節句です。(学芸員・田村彩華)

【作品】

七言絶句 大田蜀山人筆 鍬形蕙斎画 一幅 絹本淡彩・墨書 江戸時代文政元年(1818) 98.6×29.7㎝

【釈文】

日本金桃重一片。仙源何必武陵津。盤中碩果無人食。花落花開七十春。七十翁蜀山人。