先のための貢献、その備え

レイソルコラム

 今季もJ1リーグと並行して開催されているルヴァンカップ。今季の特長は3月開催の1回戦から5月開催の3回戦まで下部カテゴリークラブの本拠地での「1発勝負」という建て付け。

 柏レイソルは3月に沼津、4月に福島へと遠征。見るからにのどかなスタジアムでの開催となったレイソルのルヴァン杯だが、J2・山口が待つ3回戦進出を決めている。

 また、このルヴァン杯は「新戦力台頭」という性格を持つことで知られている大会。今年も沼津との1回戦では山田雄士や田中隼人らがリーグ戦出場へ向けた足がかりとした。ルーキーの中島舜と練習生から駆け上がる成瀬峻平もスタメンデビューを飾るなど、相変わらず見どころは豊か。

 それは何も若手選手だけに限ることではなく、サポーターから与えられた個人応援歌を持つような選手たちにも当てはまる。

 ほんの半年前までは毎試合のようにピッチを駆け回っていた白井永地の「立ち位置」は一つ顕著。

 今年はルヴァン杯で2試合フル出場を果たすも、J1リーグではまだそれに至っていない。豊かなキャリアを持つ「有段者」である白井の歴史の中でもなかなかなかったシーズンにいる。

 福島を退けた試合後、白井に「現状」を問う。

 「自分は『試合に勝つこと。勝たなければ次はないんだ』ということにフォーカスして戦っている。今日は最低限果たすことができた。『勝つこと』が常にマスト。今日試合に出た自分たちが結果を出さないと、今後チーム内は活性化していかないので、そこに集中していく。『勝利の際』を見極めていければ、勝ちはついてくる。『レイソルの勝利』のために自分は貢献をしたい。それを第一に考えていくつもりです」

 試合のピッチで練習場でロッカールームで、「すべき仕事」や「貢献の形」は選手それぞれ。だが、選手の数だけ「感情」や「考え」、「立場」が存在している。「うーん…」と少し考えた白井は気持ちを整理しながらこう話した。

 「もちろん、色々思う。『もっと試合に出たい』という気持ち、『チームに貢献したい』という気持ちが半々ある。チームに貢献したい気持ちがあるから、今日も勝たなければいけなかった。『その先』も大切。でも、勝たなければ、『次』などないから。積み重ねて初めて『その先』が見えてくるものだと思うから。『勝つこと』。それを続けていくだけ」

 口数がそれほど多くない白井だからこそ醸すリアルと決意が耳に刺さった。

 そして、この夜、福島戦ではゴールとアシストと光ったジエゴも、現在の立ち位置は白井と似ている。では、何を思う?

 「それも『サッカーの一部』だよ。だから、『そういう状況もある』という気持ち。試合に先発するのは11人の選手で、決めるのは監督。先発はまだ少ないけど、『私は30人以上の選手たちの中から起用されているんだ』という自覚がある。出番が来たのなら、『違い』を見せたい。局面を変えるプレーを狙っているし、今日のようなゴールチャンスがあれば、決着をつけて、貢献していきたい」

 達観にも近い、プロフェッショナルの思考に触れた後は、この夜の「マン・オブ・ザ・マッチ」の選手として、ジエゴから見たチームの今を伝えてもらった。

 私はジエゴの「レイソル史に自分の名を刻む」という夢が好きだ。マイクを向ける際、「まだまだ気が早いよ」と言われる覚悟で、その夢についての表現を交え聞かせてもらった。

 「私は自分たちを『とても将来性があるチーム』だと思うし、クオリティの高い選手が揃っていて、良いサッカーをしている。これを続けていけば、リーグ戦と2つのカップで上の順位を目指すことも可能だと期待しています。チームは『その域』へと近づくんだという意志があるし、もっと良くなる。私は今、そんなチームの成長過程の中にいさせてもらっている立場から云えば、今日は『手を焼いた試合』かもしれないけど、それは私たちにとって素晴らしい『教訓』でしかない。今日の試合で起きたことはこの先にまた起きうる。この教訓をまた活かす時がまた必ず来る。今日は『勝利』と共に、その『備え』ができたね」。

 眩い輝きを放ちつつあるレイソルに待ち受けるこの先のストーリーがどのようなものになるにせよ、勝ちながらにして、「その先」を見据えること。それに「備える」こと。彼らにある、その気概のようなものが少し薄暗いスタジアムで煌めいた。

(写真・文=神宮克典)