書の力 第十八回

ふれあい毎日連載

伝宗尊親王筆 有栖川切 元暦校本万葉集 一幅 

平安時代 紙本墨書 24.5×16.4

七月七日は七夕です。これは平安時代に書写された万葉集の一部で、七夕の歌を書いた部分です。もとは糊綴じ(のりとじ)の冊子本でしたが切断されて現在は軸装(じくそう)になっています。

 この元暦校本万葉集(げんりゃくこうほんまんようしゅう)は桂本、藍紙本、金沢本、天治本とともに「五大万葉」と称され、なかでも最も多くの分量が残っており重要視されているもの。書はおだやかで品格があり、紙は平安時代特有の紫と藍の飛雲が施されています。天の川の歌に華を添えているようです。

 奈良時代に編纂(へんさん)された『万葉集』には七夕の歌が多く詠まれています。当時の人びとにとって関心が高かったのでしょう。七日は短冊に願い事を書いて笹の葉に飾ったり夜空に目を向けてみたり、心穏やかに過ごしてみてはいかがでしょうか。(学芸員 田村彩華)

【釈文】

秋風之清夕天漢丹傍度月人壮子

あきかせのきよきゆへにあまのかはふ

ねこきわたるつきひとをとこ

天河霧立度牽牛之檝音所聞夜深往

あまのかはきりたちわたりひこほしの

かちおときこゆよのふけ行は