うららかな春の陽気に誘われて、ひらひらと舞うチョウの姿を見かけるようになってきました。その中でも春を告げるチョウとしてよく知られているのはモンシロチョウかもしれませんね。かつて気象庁は春の生物季節観測のひとつとして「もんしろちょう初見日」を記録していました。
わたしも2007年ごろから野田市定点で「もんしろちょう初見日」を観測しています。年によって振れ幅はあるものの、例年だいたい3月前半には飛びはじめています。ちなみに2024年の初見日は3月14日のホワイトデーでした。
じつはモンシロチョウは「春のチョウ」というわけではなく、早春から晩秋までの長期間にわたりその姿を見ることができます。ただし成虫越冬はしないため、真冬の空にモンシロチョウが舞うことはありません。
ところで散歩道で見かける白っぽいチョウは、全部モンシロチョウではなく、ていねいに見ると、いくつかちがう種類が混じっています。
その中で比較的よく見るのがモンキチョウです。モンキチョウは、漢字で紋黄蝶と書くとおり、ふつう黄色っぽいのですが、メスの中には白っぽい翅をもつ個体がいます。とまっていれば一目瞭然ですが、飛んでいると意外にモンシロチョウと紛らわしいものです。
それから同じ仲間のスジグロシロチョウもモンシロチョウによく似ています。翅の筋に沿って、黒っぽい線が入ることが多く、それが見分けのポイントになります。スジグロシロチョウの幼虫はショカツサイを食べて育つため、かつてショカツサイがよく植えられていた頃にはたくさん見かけました。ただ最近東葛地区ではほとんど見かけなくなり、稀な存在となりつつあります。
そしてもうひとつ、この春にぜひ探してみていただきたいのがツマキチョウです。ツマキチョウは4月半ばから5月初めにかけて舞う期間限定のチョウです。しかし決して稀なものではなく、意識するとわりとたくさん飛んでいることに気がつきます。翅の先がツンととがり、オスはその部分がオレンジ色です。また翅を閉じると緑色の迷彩のような柄が見えます。それから、ひらひらと舞う姿はモンシロチョウにそっくりですが、飛びかたに少しちがいがあります。
わぴちゃん(岩槻秀明)プロフィール
気象予報士。自然科学系のライターとして植物や気象など自然にまつわる書籍の制作に携わり、著書は20冊以上におよぶ。千葉県立関宿城博物館調査協力員、野田市史編さん委員会専門委員なども務める。宮城県生まれ野田市育ち。