道草の定番・猫じゃらし、じつは何種類もある!?

わぴちゃんさんぽ

 「猫じゃらし」はどこにでも生えているとても身近な野草です。早ければ5月ごろから穂を出し始め、秋になると一段と目につくようになります。子どものころ、特に目的もなく摘んでただ手に持っていた…という経験をお持ちの方も多いかもしれません。わたしもそのひとりです。そんな道草の定番とも言える猫じゃらしを取り上げたいと思います。

 猫じゃらし…植物の名前なのにカタカナで書いていないのに気づいたでしょうか。猫じゃらしは分類学上の種名ではなく、イネ科エノコログサ属に分類される植物を指した愛称のようなものだからです。その代表種が頭に何もつかないエノコログサです。

 そしてエノコログサ以上にたくさん生えているのが、仲間のアキノエノコログサです。冒頭、秋になると猫じゃらしが一段と目につくと書きましたが、それはこのアキノエノコログサがいっせいに穂を出してくるからです。

 アキノエノコログサはエノコログサに比べると穂が大きく、ゆるやかに垂れる傾向があります。より正確に同定するには、小穂(穂のツブツブ部分)を見る必要があります。アキノエノコログサは小穂を包む皮(第2苞穎)が少し短くて、先がむけたように見えるのに対し、エノコログサの第2苞穎は長くて先までしっかり覆っています。

 エノコログサ、アキノエノコログサともに穂の毛は緑色ですが、中には赤紫色のものがあり、それぞれムラサキエノコログサ、ムラサキアキノエノコログサと呼びます。

 また穂の毛が黄金色のキンエノコロという種類もあります。それからキンエノコロによく似て穂が細長くて黄金色がやや薄いコツブキンエノコロもときどき見かけます。

 雑穀のアワ(粟)は、古い時代にエノコログサから品種改良してつくりだされたものと考えられています。エノコログサもアワと同様に食べられます。ただ粒が小さくて食出が無い上に、毛がかなり気になるため、ほとんど利用されていないですけどね。

 ちなみにエノコログサとアワの雑種にオオエノコログサというものがあります。穂は太くて直立し、よくよく見ると細かく枝分かれしています。オオエノコログサは名前こそあまり知られていませんが珍しいものではなく、東葛地区でもよく見かけます。


わぴちゃん(岩槻秀明)プロフィール

気象予報士。自然科学系のライターとして植物や気象など自然にまつわる書籍の制作に携わり、著書は20冊以上におよぶ。

千葉県立関宿城博物館調査協力員、野田市史編さん委員会専門委員なども務める。宮城県生まれ野田市育ち。わぴちゃんホームページ