「アイ・ラヴ・レイソル。だから、私はここにいる」ー マイケル・オルンガ

レイソルコラム

「今年の冬は格段に寒いと思わないかい?こんな時はケニアの暖かい日差しの下でのんびりコーヒーでも飲んでいたいなって思うんだよね。この気持ち、分かる?」

冷たい雨に見舞われた練習後、そうやって笑顔を見せてから取材に応じてくれたのはマイケル・オルンガ。柏レイソルが誇る超大型FWは昨シーズンに27ゴールを挙げチームを牽引しただけでなく、最終節の京都サンガF.C.戦ではJリーグ記録となる1試合8ゴールを決めて話題をさらった。

そのオルンガに今年のモチベーションを聞いた。

「多くの人たちが言うように、レイソルはJ1にいるべき格を持ったクラブだと思っている。一昨年は不運にも降格してしまったけど、昨年はレイソルをいるべきカテゴリーに戻せてうれしかった。ネルシーニョ監督の下、ハードワークをして必死に戦って掴んだ結果さ。そして、今年は新しいチャレンジが始まる。よりレベルの高い選手やクラブを相手にするために、今まで磨いてきたサッカーをさらに強固にしてレイソルの力を披露したいね」

2018年夏にレイソルへ加入。10試合3ゴールという結果を残したが、チームはJ2に降格。これまでレイソルで過ごした2シーズンで、2つのカテゴリーでの戦いを経験したことになるオルンガは日本でプレーする外国人選手としての心得やチームの表情の違いをこう語った。

「まず、日本では選手たちは多岐にわたる要求を託されるんだ。でも、高いレベルのチームで戦う上では当たり前のことだから、常に自分の能力を最大限に活かさないと、チームに迷惑をかけてしまう。私がレイソルに加入した時、チームは持っている高いレベルを発揮できずにいた。私も最善を尽くしたつもりだけど満足のいく結果は得られなかった。昨年は幸いにも春から良いスタートを切り、自分もその中でうまく乗っていけた。チームにフィットするために最大限の努力はしたけれど、チームのハードワークとみんなが自信を持って戦った、そのおかげさ。今年を良いものにするためにも、新しい仲間たちともう一度素晴らしいスタートを切る必要があると思うよ」

では、素晴らしいスタートを切ったその後のストーリーを話して欲しいとリクエストすると、オルンガの知性と謙虚な人間性が伺える意外な答えが返ってきた。

「昨年だって、全ての試合が素晴らしいわけではなかった。自分たちもそれは理解しているし、優勝と昇格という良い結果を掴むまでには、良い部分だけじゃなく課題の修正作業とも向き合いながら必死に戦ってきた。私もサッカー以外の日本の文化に適応する努力を続けたしね。それは今年も変わらない。Jリーグは競争力がとても高いリーグだから、毎週毎週、厳しい戦いが待っている上に今年はJ1でのシーズン。良い結果を得るためには1試合1試合を大切に戦う必要があると思う。そして、そのクオリティがレイソルにはあると信じているよ」

穏やかな語り口と冷静な思考、溢れる知性が印象的なオルンガだが、それとは裏腹に昨年の素晴らしいパフォーマンスを見た一部サッカーファンからはまるで映画の中のヴィランのように、「存在が反則級だ」と喩えられることも多い。

そう話を向けると、悪戯な笑顔を見せた。

「それはどこのサポーターの気持ちなんだい?ぜひ、知りたいね(笑)。でも、自分はJリーグで戦う以上は日本のサポーターやファンの方々に明確なインパクトや足跡を残したいと思うタイプだから、『反則級』と言われて悪い気なんてしない。むしろ、うれしいよ。だって、それは自分がこの国のサッカー界に何かを残した証だから。それに自分以外にも、Jリーグに素晴らしい外国人選手が集まることは日本人選手のレベルアップに繋がるはずだから、とても良いことだよね」

日没が近づき、さらに気温が下がる中、肩を竦めて襟を立てたオルンガに最後の質問を2つ投げ掛けさせてもらうと、「OKさ」と快く応えてくれた。

その2つの質問とは、「新しい背番号『14』について」と「今年もレイソルを選んだ理由」だった。何故なら、ケニア代表の顔役的存在の選手であり、スペインリーグなどでもプレー経験があり、日本であれだけのインパクトを残した選手を欧州クラブが放ってはおかないはずと考えられていたからだ。サポーターのオルンガへの愛着は新体制発表会で、彼の残留が発表された瞬間に巻き起こった大歓声でも証明されていた。

「実は私にとって『14』という番号は大切な番号で、ケニア代表でもこの番号を付けている。由来は『ティエリ・アンリ(元フランス代表)が付けていた番号だから』なんだよ。アンリは素晴らしいストライカーであり、様々な記録を打ち立ててきた選手。私のアイドルであり、憧れなんだ。それに今は私もJリーグの記録保持者だろ?だから、『14』を付けてもいいのかなって。あと、私が柏レイソルにいる理由だよね?それは『レイソルを愛しているから』。柏での生活も快適さ。英語が話せる環境が増えたらもっと幸せだけどね(笑)。アイ・ラヴ・レイソル。だから、私はここにいるんだ。今年もみんなにまた会えてファンタスティックだよ!」

オルンガの反則級「レイソル愛」に乾杯だ。

(写真・文=神宮克典)