日本大学松戸歯学部は歯科学を「口腔科学(Oral Science)」と捉え、医学の一分科としての教育を展開。最前線で活躍する歯科・医科のスペシャリストに、医療現場の現在と未来について連載でリポートしてもらう。
小児のむし歯予防
お口の健康を維持するために、むし歯の発症を予防することは大切です。今回は、当院におけるむし歯予防への取り組みについて紹介します。
歯磨き指導と食事指導
歯磨き指導では、個人の歯口清掃習慣と歯垢付着状態から問題点を抽出し、これを小児と保護者の方にわかりやすく説明します。そして、小児期の口腔状況から、その時期に合った、正しい歯磨き方法の習得とその習慣づけを行っています。
また歯ブラシだけでは汚れを落としにくい歯と歯の間には『デンタルフロス』、生え途中の臼歯には歯肉弁が被っているので『タフトブラシ』の使用を推奨しています。
歯磨きと同じくらい大切なのは食生活です。食事指導では、主に砂糖の摂取回数や量が過剰にならないようにするなどの『シュガーコントロール』を行っています。またお菓子だけでなく、ジュースや清涼飲料水などの甘味飲料も、注意が必要です。
予防填塞(てんそく)=シーラント
小児の生えたての歯は磨り減っていないので溝が深く、汚れが溜まりやすいです。また石灰化度が低く、むし歯の原因菌が産生する酸に溶けやすい状態です。このような理由から、生えたての歯はむし歯になりやすいです。
『予防填塞』は、歯の溝をシーラント材で埋めてしまうことで、食べかすが溝に詰まらないようにして、むし歯の発症を予防する方法です。
歯面清掃(PMTC)
むし歯の原因となる歯垢は『バイオフィルム』というたくさんの種類の細菌の集合体が歯に付着したもので、バイオフィルムを歯ブラシだけで完全に除去することは困難です。
当科では『PMTC』と呼ばれる歯科器材を用いたプロフェッショナルな歯面清掃により、バイオフィルムの除去を行っています。一度バイオフィルムを除去すると、再度形成されるまでに時間がかかるので、定期的にPMTCを行うと高いむし歯予防効果が期待できます。
フッ素の使用
フッ素は歯の表面の結晶構造を変化させることにより、歯質を強化し、むし歯の原因となる酸に溶けにくくすると同時に、歯の表面の再石灰化を促進する効果があります。
特に生えたての歯はフッ素の取り込みがいいので、大人よりも子どもの方がフッ素の使用が効果的であると言えます。
フッ素の使用法には①歯科医院で行うフッ化物塗布、②学校単位や自宅で行うフッ化物洗口、③自宅でのフッ化物配合歯磨剤の使用があります。これらは主にフッ素の濃度に違いがあり、それぞれ使用頻度や用量が異なりますので、取扱いについては歯科医師に相談してください。
■日本大学松戸歯学部庶務課 電話047・360・9567。