Drリポート 206  特殊歯科から耳鼻咽喉科へ

医療最前線Drリポート

脳神経・頭頸部外科学講座 准教授 丹羽秀夫先生

障害者歯科学講座 専任講師 田中陽子先生

今回は耳鼻咽喉科と特殊歯科の連携を特殊歯科の田中講師から解説していただきます。

特殊歯科から耳鼻咽喉科へ

当院では障害などによって歯科治療において何らかの配慮が必要な方々のための診療科として特殊歯科が病院開設当初から設置されています。大学付属病院として障害のある方々の歯科治療に特化した科を設置したのは本学が日本で最初になります。

現在、日本には29の歯科大学が存在しますが、このような科を独立して設置しているのは約半数の15大学です。設置していない大学では小児歯科が主にその役割を担っています。

障害児や障害者(以後、障害児者)にとって、開業歯科医院に受診することは様々な背景により困難であり、多くの方は大学付属病院や地方自治体と歯科医師会による口腔保健センターなどを利用しております。しかしながら、地域によってはこうした機関のないところもあり、障害児者の歯科医療へのアクセスの困難が現実に存在し、本当に多くの課題が残されています。

これは歯科だけではなく、耳鼻咽喉科においても同様のことが見受けられます。障害児者の場合、医療行為に対して恐怖心が強かったり、もしくは反射的に身体を動いてしまったりし、危険を伴う医療行為が安全に提供できないことが多くあります。そのため、彼らのなかには必要な医療を享受できない例も多々あるのが現状です。

歯科と医科の連携でシームレスな医療体制

また、医療機関を受診するにあたり、何らかの支援が必要であり、その煩わしさから足が遠のいてしまうこともあります。現在、当院耳鼻咽喉科では歯科担当医が同席のもと受診するシステムが整っております。

耳鼻咽喉科疾患(急性鼻炎、アレルギー性鼻炎、急性扁桃炎等)への対応、耳の聞こえの検査、耳垢とりなどの処置、治療を外来で、もしくは全身麻酔や静脈内鎮静法といって眠った状態で歯科治療(特殊歯科外来で)を行う際に一緒に行うことが出来ます。そのためか、特殊歯科受診の際に、当院に併設された耳鼻咽喉科の受診を希望される方が徐々に増えてきました。

 特殊歯科では現在、0歳児から高齢期までつなぎ目のないシームレスな歯科治療と摂食嚥下機能療法を外来および訪問にて提供しております。このシームレスな医療の提供は障害児者の平均寿命が延びている中で医科では特に大きな課題です。

愛情のこもった、人中心のケア

医科には一般的に18歳という制度上のラインがあります。18歳までは小児科を受診できますが、それ以降は基本的に成人の科を受診します。しかしながら、主治医や環境の変化で、その移行が難しいことが現実には多いと言われています。当院耳鼻咽喉科では年齢問わず対応しておりますので、生涯を通して同じ場所で医療を受けることが出来ます。

最近、歯科病院にも医科を併設するところが増えていますが、全国を見渡しても、当院のように、歯科と耳鼻咽喉科をシームレスに受診できるような機関がほとんどないでしょう。当院ではこのようなメリットを生かし、これからも特殊歯科はTender loving careとPerson-centered Care(やさしい愛情のこもったケア・人を中心にしたケア)をモットーに皆さんの健康と健口の維持向上のお手伝いをしてきたいと思います。

■日本大学松戸歯学部庶務課☎047・360・9567。