ゼロヒャクの魔法使い
皆さんは「ゼロヒャク教科書」という言葉を聞いたことがありますか。これは筑波大学准教授の落合陽一先生が書いた『0才から100才まで学び続けなくてはならない時代を生きる学ぶ人と育てる人のための教科書』の略称です。
長くて印象的なタイトルである一方、「教育論」のようなお堅いイメージがある本書ですが、著者の落合先生は実は「現代の魔法使い」の異名を持つ人物なのです。
物理現象を魔法のように操って“空中に浮遊するオブジェ”や“触れる光の絵”などを発表した先生は32才の新進気鋭の学者です。
さて、そんな先生が書いた「ゼロヒャク教科書」では、たとえば「なぜ勉強しなくてはいけないの?」といった根本的な疑問にも一つの答えが示されています。
この疑問は、実は勉強すればするほど膨らんでいく不思議な疑問ですね。
先生いわく「『学校の勉強なんて社会に出たらまるで役に立たない』とよく言われますが、その考え方の大きな間違いは、教育にある『コンテンツ』と『トレーニング』という2つの要素のうち、後者のもつ意味を正しく認識できていないことです。
学校で学ぶ数式や漢字(コンテンツ)も大事ですが、それ以上に学習する訓練(トレーニング)を怠っていたら、社会に出た時に新しいことを学習する方法がわからずに、自分の経験を使えない人となってしまうのです」。
「何才になっても新しいことを身につけられるスキルはどうやって培われるのかというと、若い時にいかにたくさん新しいことを習得しようとしたか、それを実際の現場で使おうとしたか、つまりたくさん勉強し実践したかどうかだと思うのです」。
特定の勉強の内容そのものよりも、勉強し続けることを止めないことの方が重要ということでしょう。なるほど!と腑に落ちた方も多いのではないでしょうか。
■K太せんせい
現役教師。教育現場のありのままを伝え、読書案内などを執筆する。