k太せんせいの放課後の黒板消し 55

K太せんせいの「放課後の黒板消し」

テスト前のてんやわや

 季節はすっかり秋色に染まってきました。彩り鮮やかな紅葉や大きな夕日、キンモクセイの香り。視覚や嗅覚だけでなく、秋の味覚たちには目も鼻も口も‥この時期、五感のすべてが奪われてしまいます。学校行事が目白押しの秋だと言うのに。

 さて、生徒たちには季節や行事の他に、もう一つ規則正しく巡ってくるものがあります。それは定期試験です。そして、テスト前の一週間には色々なラッシュが起こるのも、もはや風物詩の一つです。

 まずは「コピー(ノート写し)ラッシュ」。プリントやノートの欠けている部分を怒濤の勢いで修繕していきます。中には「神様、仏様、○○様!」と崇め奉られるノート作りの名手もいて、争奪戦が繰り広げられることも……。

 次は「おねだりラッシュ」。少々無遠慮に、いや堂々と「プリントを無くしたのでもう一枚ください」と教員におねだりするのです。もちろん勉強するのが目的なので喜んで協力したいところなのですが、大切な学習プリントを毎度無くすという事の方が重大です。

そこでチクリとお灸が据えられます。「そもそも無くしているのは整理整頓する心がけそのものだぞ!」「このプリントをもう一度やり直すということは、今度のテストは高得点を期待しちゃうけどなあ」などと言われます。「いやあ…頑張ります」「バッチリです、楽しみにしていてください」苦笑いと虚勢を張りながら職員室を出ていきます。

 最後は「質問・添削ラッシュ」。鋭い質問やよく勉強していることがうかがえるものが多いですが、前日になって大量に来られてしまうと分身の術が欲しくなります。

また「予想オリジナル問題を作って解きました。採点してください」という強者も時々現れます。

答えは既に君の中にあるのでは?と少々不思議に思いつつ、これらの熱意に100%で応えているうちに試験に突入していきます。

■K太せんせい

現役教師。教育現場のありのままを伝え、読書案内などを執筆する。