◆緑さん(大学2年)、真面目な性格で小さいころから頑張り屋。高校は進学校で大学受験も猛烈に頑張り、見事希望の大学に入った。両親も門出を祝ってくれ、実家を離れて一人暮らしが始まった。しかし、大学生活が始まって間もなく、朝起きられない、無気力、理由もなく涙が出るなどが続き、大学を休む日が増えていった。単位が思うように取れず、留年か休学か…というところまで来て、緑さんはようやく実家に状況を伝える電話をかけた。それまでは実家に、大学には順調に行っているような話をしていた。
電話口に出たのはお母さんだった。意を決して今までの状況を話すと意外な言葉が返ってきた。「私も同じだったよ」。話を聞くと緑さんのお母さんも高校生のときに急に気力がなくなり、数か月学校に行けなかった日々があったとのこと。 「あんたも私と同じで真面目に頑張りすぎちゃうところがあるから、疲れたんだろうね」と労ってくれた。緑さんは心が解きほぐれていくように感じ、泣いた。
自分で「こういうところが私の困ったところ」と感じている点について、親と「同じだね」と共有できると、子どもは大体安心することが多いようです。緑さんもお母さんの不登校の話は初めて聞き驚いたそうですが、「お母さんも学校休んでたことがあったんだ。私と同じだな」と思えてなんだか嬉しかったと言っていました。同じ欠点を持っていることを認め合うと、親子の絆は深まります。 ちなみに美点については「私に似たのね」と言われても大して嬉しくありません。
子どもが落ち込んでいるとき、早く元気出しなさいと励ますより、親が自分の欠点や失敗談を話してあげる方が子どもに安心感を与えられます。気を付けたいのは「私はこうやって乗り越えたんだからあなたも頑張りなさい」というお説教にならないように。「大人にもいろんな失敗やつまずきがあるよ。私に似ちゃったんだから、立派にやろうとしなくて大丈夫だよ」というメッセージで、子どもは心に大きな支えを持てます。
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