「自分はもう『若手』じゃない」ー大南拓磨

レイソルコラム

 2020シーズン、磐田から加入したDF大南拓磨。

 4シーズンを過ごした磐田を離れての加入。鎌田次郎(相模原)や染谷悠太、山下達也、鳥栖から加入したDF高橋祐治といった選手たちが揃う柏レイソルでの競争や成長を考えてのステップアップだった。

 古賀太陽や神谷優太とは2019年の「第47回トゥーロン国際大会」を始め、高体連や年代別日本代表から旧知の間柄ではあったが、実は小学生時代にこんなエピソードがある。ジュニア年代を過ごした愛知FCは、当時柏レイソルアカデミーと交流があったといい、愛知県遠征の際に大南家では当時Uー12所属の伊藤達哉(シントトロイデン)をホームステイで迎えたというのだ。

 「太陽のことは以前から知っていましたし、優太くんには鹿児島実業時代に完敗しています(笑)。達哉とはトゥーロンで一緒になりましたね。代表チームでの再会は感慨深いものがありました。また一緒に戦いたいですね」

 レイソルでのデビューシーズンは自己最多タイとなる22試合に出場して、上々の1年目を過ごした。在籍2年目を迎えるチームについて大南はこう話す。

 「チーム全員が勝利に貪欲で、『タイトルを獲る』という同じ方向に向かっていくチームなので、練習から質が高いですし、高め合う一体感があります。仲は良いけど、紅白戦ではバチバチしていて良い関係のチームだと感じました。また、スタッフのみなさんも感じたことを丁寧に伝えてくれるので助かっています」

 2月の開幕戦はスタンドで迎えたが、焦ることなく自らとチームの勝利のために鍛錬を続けた。控えメンバーで構成されたチームのCBとして、マイケル・オルンガ(アル・ドゥハイル)や江坂任、クリスティアーノらと日常的に対峙する中で得た皮膚感覚は大南のポテンシャルを刺激した。

 「最初は控え組でしたから、練習ではミカや任くん、クリスたちとのマッチアップが多くて。特にミカはMVPという結果が示すように、明らかに抜きん出た選手ですから、対戦しただけで自分のスタンダードが上がっていく感触があって。ミカは自分を成長させてくれた選手の1人です。マッチアップすると、全く動かない。なんていうか…『大きな木』みたいな感じでした(笑)」

 新型コロナウィルス感染拡大による自粛期間が明けたタイミングからは徐々に出場機会を増やして、新しい風を吹かせた。練習で得てきた皮膚感覚や経験豊富な選手たちとのプレーからの学びだけでなく、同世代の古賀の存在も大南にとっては特別な刺激だったという。古賀も「拓磨くんは刺激的な存在」と話すなど、お互いのプレーに影響を与える関係性だった。

 「太陽は自分の中で指針になる選手。器用で守備も良い。攻撃参加もビルドアップも上手い。チームで1番多く試合に出て、パフォーマンスを維持できていたし、手本になるところが多い。3バックもSBもできるし、CBもできちゃう。うらやましい能力が多く、試合になれば頼りになりますし、刺激になる選手ですね。僕にとって」 

 刺激的な日々と新たな出会いの中で戦い抜き、タイトル獲得は逃したが、7位でJ1リーグを終え、ルヴァン杯は決勝戦進出。1人のアスリートとして新天地でのステップアップを感じさせる1年を終えた。

 今季は更なる飛躍を期待される中、「昨シーズンの総括を」と話を進めると、「何よりも最初に改善点が浮かびます」と少し口籠もった。

 「ルヴァン杯決勝でのプレーが不甲斐なかったと感じていて、『もっとできたよな…』という思いが強くあります。1点目はカウンターになった時に時間を作ろうと後ろへ引いたのですが、もうその後には足が出せない状態になっていた。ペナルティエリアに入らせない守備をすべきだった。2点目もヘディングが飛ばなかったのと、自分がヘディングしたボールにもう一度プレスに行けたはずだと感じています」

 自身初めての決勝戦という檜舞台で、2つの失点両方に関与してしまった大南。胸に去来した悔しさは察して余りあるが、大南にあの日の気持ちを聞いた。

 「悔しさより、虚しかった。FC東京の選手が喜ぶ様子を見て、『こうなるはずだったのに』って。初めて味わう変な気持ちになりました。自分にとって初の決勝戦で、普段通りのつもりでも結果的にそうじゃなかったところもあったので、『場の経験』や『教訓』を得たんだとポジティブに捉えていければ。結果が全てのプロの世界にいて、負けていいわけはないですが、『負けて得るもの』も少なからずあると思うので。自暴自棄にならずに見つめ直していけば、次に優勝するときのための教訓にできるはずだって」

 サイズに恵まれ、強く速く柔らかい抜群のアスリート能力を持つ。近代的ディフェンダーの理想像を地でいくような大南に魅了されたサポーターは多いはず。特別な舞台で新たな経験と教訓も得た。新シーズンを迎える前に、そのプレースタイルを支える大南の思考や心情とはどのようなものなのか、言語化してもらった。

 「スピードやカバーリングの能力は自分のストロングですが、『自分の良さを出そう』というよりは『無理をせずにできることをやる』っていう判断基準を優先しています。自分はCBなので、『セーフティに。失点を少なく』というプレーを突き詰めながら、チームとして結果を出す。自分のパフォーマンスよりも、チームの結果を優先するタイプの選手だと思います」

 「自分のパフォーマンスよりチームの結果」ー。

 それが故、新国立競技場には大きな後悔を置いてきてしまった。だが、課題も明確になった。大南はこれまで言及した技術面や戦術面の向上もさることながら、精神面にもフォーカスを当てる。

 「選手は試合に出て、結果を残して、初めてチームや周りの信頼を得ていくものですから、最低限のことはできたとは思う反面、これからさらにレイソルの中心選手になっていくためには、自分がリーダーシップをとるべき場面やもっと自信を持つべき場面も増えてくるはずなので、メンタル面も成長しないと。自分はもう『若手』じゃないんで」

 そして、もう一度。思いを込めた。

 「開幕から試合に出て、勝利に貢献して、タイトルを獲りたい。不甲斐ない試合はしたくないっていう気持ちです。『…何でああしなかったんだろう』っていう後悔が出ない試合を増やしたいなって、今年は」

 具に危機を察知して相手のパスを弾き返し、やられても立ち上がり食らいつく。何度でも何度でも。今季もそんな全身全霊のプレーに惹かれ魅了されるのは必然だ。

(写真・文=神宮克典)

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