「幼児教育は、野菜の育て方で言えば土の部分。どんな土に、何を植えるか。土の栄養分で野菜は全てが変わる。子どもたちが将来どんな大人になるかは、幼少期にどんな場所でどう過ごすかで変わるんです」。
そう話し始めた戸巻聖さん。柏市の認定こども園『くるみこども園』の園長でありながら、柏市私立認可保育園協議会の会長、沖縄にも保育園を持つ、本当に多忙な人である。
そんな戸巻さんの人生はまた面白い。
幼稚園教諭の資格を取るために、北海道まで行き学ぶ。当時まだまだ男性の幼稚園教諭は少なく、
就職しても保守的な園で『子どもを育てるための基盤を作る現場』とは、ほど遠かった。
それでも戸巻さんは諦めない。イギリスへ留学し、多様性の中での幼児教育を学んだ。
寄り添うってどういうことなんだろう。
『あなたはあなたでいい』のびのびとした教育環境に触れる。日本に戻り30歳になる頃、自分で託児所を立ち上げることで起業。理想とする『子どもを育てる土壌』を作るために戸巻さんは全力で走り始めた。
園では『思いやりのある行動をした子どもの一瞬をしっかりと見つめて褒める』ようにしているという。例えば、お友達に親切にできた子がいたとしたら「○○ちゃんが、おもちゃを貸してくれて嬉しかったって言ってたよ」。そう言うと、子どもたちの目は輝く。その積み重ねが、いずれ社会に出て未来を担う子どもたちの基盤になっていく。
とにかくたくさんの「ワクワクする瞬間」を作りたい。園では「熱気球に乗る」「屋形船に乗る」「ピザ窯でピザを焼く」など、ちょっとびっくりしてしまうような企画も実現してきた。「段取りが大変かな…。仕事が増えるな…」
一瞬そんな気持ちがよぎることもあるが、子どもたちの目を輝きを優先してしまう戸巻さん。
「こんなに全力で関われる、面白い仕事ないでしょ?」といたずらっぽく笑う。
インタビューをしながら『子どもの心をちゃんと持っている大人』に出会えた気がした。
(写真・文=ひなたなほこ)