昔ながらの素朴な味わい 習志野市
京成線谷津駅周辺を散歩していると、どこからかふんわり香ばしい香りが鼻先をかすめた。香りの元を辿り、行き着いたのは「谷津せんべい」。歴史を感じさせる店構えで、店内には年季の入った道具が並ぶ。
創業から半世紀以上もこの地で愛され続け、その味を守り続けているのは、浅沼勝さん。八丈島出身で、実家は大きな卸の商売を営む。浅沼さんは大学入学とともに上京。「商人は忙しくて活気があるな」と中学生の頃には自営業に魅力を感じていたんだそう。
高度経済成長、所得倍増といった言葉が飛び交う時代、大学3年で就職が決まっていたものの、人に使われるのではなく、自分で商売をしたいという思いから、煎餅屋の親戚のもとへ弟子入りし、商売の世界へ。
そこは京成線沿線を中心に谷津、志津、佐倉などにも支店を構えるほどの大規模な商いをしていて、新検見川駅にある「けみ川煎餅」で、約10年の経験を積み、独立し「谷津せんべい」を創業した。
これまで手がけた商品の中で、今でこそ普通の進物用に1枚ずつ包装した煎餅は近隣でやっている店がなく、大ヒットしたんだそう。その後も揚げ餅を海苔で巻いた「磯娘揚」や中華料理のおこげからヒントを得た「おにぎり」などは今も看板商品。
以前は、煎餅には破砕米やくず米が使われてきたのに対し「今はご飯に使うほどの上質な米を使うので昔よりは断然美味しい」と浅沼さん。
さらに最近は世界中のお菓子が容易に手に入るからこそ、「硬くてしょっぱいものが恋しい」と原点回帰でお煎餅を買いにくる若い人も多いとか。時代は変わっても日本人が煎餅を求める気持ちは変わらないようだ。
▽問☏047・477・7715(習志野市谷津5-5-6「谷津せんべい」)。