関戸本(せきどぼん)古今集(こきんしゅう)伝藤原行成<972-1027>平安時代 彩箋墨書 21.0×17.4㎝ 一幅成田山書道美術館蔵

書の力

昨年のNHK大河ドラマ「光る君へ」の影響で、日本独自の仮名文字に興味をもった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
これは、『古今和歌集』二十巻を書写したもののうちの断簡(だんかん)(切)です。もとは冊子本でしたが、現在は軸装になっています。一部が名古屋の関戸家に伝わったためにこの名で呼ばれています。
古来より藤原行成(ふじわらのゆきなり)の筆跡と伝えられていますが、実際の書写年代はこれより後のもの。整った字形に抑揚のある筆づかいを展開させた文字は抜群で、秋の歌を二首、詠者と和歌とが区切れよく収まっています。
その歌と調和するようになじんだ淡い紫の染紙は品が良く、軸の仕立てもきれいで状態の良いものです。文字も、体裁も、紙も、表具も良い、注目の一幅といっていいでしょう。
この作品は当館で開催中の「収蔵優品展 篆・隷・楷・行・草・仮名-書体をめぐる書の表現」に出品しています。4月20日までご覧いただけます。(学芸員・田村彩華)