空駆ける馬上の女武者 印西市に巴御前の墓を訪ねて
印西市小林
昨年のNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』の、和田義盛と女武者、巴御前の別れのシーンは実に感動的で記憶に新しいと思う。印西市小林に源義仲と和田義盛に愛された巴御前の墓があると聞き、車で向かった。
この日は最初に木下駅南骨董市を訪問。ひと通り見物した後、「木下せんべい」ののぼりの方へ。一袋購入して店主と立ち話。「本業はガソリンスタンド経営で4代目。祖父が始めた手焼きせんべいの店を継いだ。ガソリンスタンドの横にせんべい屋を作りました」。巴御前の墓について尋ねたがあまりご存じないよう。
次に外国の古い切手を販売する印西市国際交流協会のコーナーへ。「骨董市に参加することで木下地区の町おこしに協力したい」とのこと。趣味のコラージュ作品に使う、一袋30枚入りの古切手を2袋購入。外国切手は美しい。巴塚については「小林牧場の方にあるらしい」と教えてくれた。
骨董市を後にして車を走らせ、鳥見(とみ)神社まで来ると「巴塚入口」の、見落としてしまいそうな小さな看板を見つけた。細い道を入り、ゆっくり進む。右側の電柱の前に「巴塚」の文字。
車を降りてさらに横道に歩くと、奥の方に小さな塚が見えた。こんなところに!と、近づくと平らな石碑(供養のための題目板碑)が土の上にポツンと乗っているだけ。しばらく近くを歩いてみたが、実に静かな森の中だ。「生き延びろ!」と、夫の和田義盛の言いつけ通り、91歳まで生きたという、これが勇猛果敢な女武者の墓なのか・・。
近くに道祖神や庚申塔が6つ並んでいたので、集落があったのがわかる。音もなく、もみじが鮮やかな赤色で空を染め上げ、別世界に迷い込んだような不思議な感覚にとらわれる。
車へ戻り帰ろうとすると、犬を連れた女性がふいに現れた。巴塚の前での私の写真撮影をお願いすると、快く引き受けてくれ、巴御前にまつわる話をしてくれた。
「巴御前は鎌倉から小林に来てこの地に住み、農民たちに慕われながら、ここで亡くなったと言われている。馬に乗って走り回っていたとの話もある。後世、近くの小林牧場では、城主へ献上する馬を育てていたらしい」。写真を撮ってくれたお礼を述べ、巴塚を後にした。
小林牧場の前を通過したとき、柵に付けられていた馬のレリーフが目に飛びこんできた。この牧場は大井競馬の競走馬を育てているそうだ。帰りの車を運転しながら、脳裏に馬に乗って野山を疾走する美しい巴御前の姿が浮かんできた。