曹全碑《書の力 第46回》

ふれあい毎日連載

後漢 曹全碑(そうぜんひ)中平2年(185)1帖 拓本 31.8×20.5㎝

成田山書道美術館蔵

 新紙幣が発行されて2カ月余り、新たなお札を手にされた方も多いのではないでしょうか。お札に表記されている「日本銀行券」の字は隷書(れいしょ)体ですが、今回ご紹介する曹全碑は隷書の中でも艶麗な表現の典型として知られています。

曹全は中国後漢時代の敦煌(とんこう)出身の地方官です。長年の善政と、相次ぐ後漢末の動乱からこの地域を守るのに大功があったとして、その業績を称えるためにこの碑が建てられました。

隷書の中でもこの曹全碑の書風が日本に伝わったのは比較的時代が古く、江戸時代にはすでにこの書風を得意とした能書(のうしょ)もいました。私たち日本人にとってもなじみの深い書だといえるでしょう。

(学芸員 山﨑亮)

【釈文】

君(曹全のこと)は名は全、字(あざな)は景完。敦煌效国(とんこうこうこく)出身の人です。その先祖は恐らく周王室の末裔です。周の武王は機会に乗じて殷商(いんしょう)を征伐して天下を統一し、功績を遺しました。天からの加護です。弟の叔振鐸(しゅくしんたく)に曹国の領土を与え、その一族は国名を氏にしました。(以下略)