柏レイソルのDFラインを支える染谷悠太選手。昨季京都サンガF.C.より加入後、巧みな技術やリーダーシップ、J1とJ2、ACLでの戦いで培ってきた経験を活かしてレイソルのJ1昇格に大きく貢献した。染谷選手は実に40試合もの公式戦に出場。髪を振り乱して全身全霊の戦いを続けるうち、チームやサポーター、ネルシーニョ監督の信頼も勝ち取った。
「チームメイトのおかげでチームにすぐ馴染めたので、監督の求めるサッカーを表現することだけを考えてプレーすることに集中できた」と昨季を手短に振り返った染谷選手はレイソルという新天地で得た新たな刺激を明かしてくれた。
「監督はチームに流れる空気に気を配り、具に感じ取る。だから、大差で試合に勝っても、選手の姿勢や内容次第では『私は全く嬉しいと思わない』とはっきりと言われる。そういう緊張感の下でプレーを続けていたある時、『私は滅多に選手を誉めたりしないが、良いプレーをしてくれている。続けて欲しい」と言ってもらえたりと、自分の成長も感じた実り多き1年でしたし、『必ず監督を男に!』じゃないですけど、選手をそういう気持ちにさせてくれる監督でした」
迎えた今季。戦いのステージはJ2からJ1へステップアップ。昨季は思い通りに運んだこともそうは運ばないケースだって十分に起こり得る。リーグ開幕戦を前に開催されたルヴァン杯のガンバ大阪戦では完封勝利を飾るも、随所に「J1の凄み」というものを見せつけられた。
「もちろん、最初から全て思い通りにいくとは考えていません。J1という舞台で戦う以上、相手が持つ個々のクオリティーに関しては明らかに違ってくることは分かっていますしね。だけど、サッカーは自分1人で戦うわけではないですから、監督が求める組織的なプレーを常に表現できるように自分を含めた選手たち、個々のレベルアップが求められる。少しでもチームにとってのプラスアルファとなれるように」
そう謙虚な姿勢を貫くのはわけがある。高橋祐治選手や大南琢磨選手という若く才能豊かな新戦力たちが加入。染谷選手との数多のストーリーを歩む鎌田次郎選手や山下達也選手といった猛者たちも出場機会を狙っているなど、チーム内の競争は日々激化の一途を辿っている。現在のレイソルに「与えられるポジション」などないことを染谷選手は身をもって理解しているからだ。
「自分はどんな時も『賢く・強く・巧く』をテーマに掲げてプレーを続けてきた。今年もチームの勝利の為に成長を続けていくことへフォーカスを当てていく。それは今年も変わらないテーマになります。今年は自分のポジションに競争相手が増えましたが、選手にとってそんなありがたい環境はないですよ。この歳になっても成長できるわけですから!自分が置かれた状況を楽しんで、チームで切磋琢磨を続けて、強いチームを作っていくことができたら」
百戦錬磨の指揮官が、または共に戦う者たちが、あるいはチームに声援を送る者たちが彼を選ぶそのわけが改めて分かった気がした。
(写真・文=神宮克典)