「金絲七彩 並木秀俊截金作品集」

ちば湾岸エリア

市川市在住 

日本画家並木秀俊さんの初作品集

 飛鳥時代から伝わる伝統技法「截金(きりがね)」と日本画を融合した独自の作品を制作する東京藝大出身で、院展でたびたび奨励賞を受賞する並木秀俊さん(49)が「並木秀俊截金作品集」を昨年8月、出版した。61点の作品が111㌻にわたってわかりやすい解説とともに掲載されている豪華本だ。表紙は代表作ともいえる「金孔雀」。題字の文字も並木さんが書いた。

 巻頭の一文で「截金の技法や素材についての説明に加えて、これまで自身で培ってきた技法や金箔にまつわる話も盛り込みました。截金の起源を探り、何カ国も巡って調査した研究についても、その成果を一部紹介しており、読み応えのある内容になっているかと思います」と、語っている。

 截金との運命的な出合いは大学院の古美術研究旅行で、東大寺俊乗堂(しゅんじょうどう)所蔵の快慶作、木造阿弥陀如来立像を見た時だ。「宇宙を眺めるように神秘的ですっかり魅了された」。その後、截金を人間国宝の故江里佐代子さんに手ほどきを受け、金箔で描く線と岩絵具の融合を学び、それが日本画の新しい可能性を広げていくことになる。

知識のない者でも楽しめる

 極薄の金箔を線状もしくは角形、菱形に切ったものを切り貼りして、文様や意匠を描く「截金」。粒状の箔を撒いた様子が砂のように見える「砂子」。ランダムに散らすことで不規則性を主とした魅力を醸し出す「野毛」など、それぞれの解説に美しい写真が付いている。箔表現に用いる16個の道具はすべて手作りだ。

 文中の対談も興味深い。山種美術館館長山崎妙子さんとの対談では、速水御舟の「名樹散椿」が並木さんの制作に決定的な影響を与えたこと。御舟が新しい表現を常に模索していることで自身も「截金と日本画の融合」というテーマを得ることが出来たと話す。銀座風月堂の横山浩史社長との対談では、革新がなければ伝統は続かないという考えを語っている。

截金鑑賞の面白さ

「光の反射を受けて輝く截金は朝、昼、晩の時間帯や天候によって表情を刻々と変化させる」。截金作品を日々の暮らしの中でその美しさを愉しむためには作品を置く位置が大切。「蠟燭のゆらめく灯火の下でキラキラと輝く截金を見ること」がおすすめだそうだ。

(「新潮社図書編集室」定価3850円)
■並木秀俊(45歳)

1979年佐倉市生まれ。2008年東京藝術大学保存修復(日本画)後期博士課程修了。現在截金師、日本画家、日本美術院特待。東京藝術大学ゲスト講師。

▼賞歴:2008年博士審査作品大学買い上げ。 2010年「野村美術賞」受賞。第95回「日本美術院再興院展」奨励賞受賞(第97回・101回・103回受賞)。