DRリポート218回 

ふれあい毎日連載

安心・快適な歯科治療 その2

~日帰り全身麻酔~

日本大学松戸歯学部歯科麻酔学講座教授 山口秀紀先生

山口秀紀教授

近年、大学病院などの大規模施設だけでなく地域の口腔保健センターなどにおいても、口腔外科処置や歯科治療の際に全身麻酔が用いられるようになってきました。全身麻酔は、治療中の意識や痛み、記憶を完全に抑えるため、患者さんは手術中に苦痛を感じる事はありません。また治療の妨げになるような体の動きを止めることから、治療を行う歯科医師にとっても確実で精密な治療を行う事ができる方法です。

日帰り全身麻酔

従来、全身麻酔を用いて歯科口腔外科治療を行う際は、入院処置が必要とされていました。しかし、今日の医療技術や麻酔薬の発達により、入院の必要がない日帰りでの全身麻酔下歯科治療が実施されるケースも増えてきました。

日帰り全身麻酔は、あらかじめ外来で必要な検査、診察、説明を受けていただき、治療の当日に来院し、全身麻酔下で治療を受けた後、入院することなくその日のうちに帰宅する方法です。(図)

図 日帰り全身麻酔の流れ(入院処置との比較)
日帰り全身麻酔では、治療前に予め必要な検査、診察を行います。治療当日に来院し、治療終了後は病棟で休んでから当日中に帰宅となります。

歯科病院での日帰り全身麻酔

日帰り全身麻酔は、医科領域では眼科、耳鼻咽喉科、泌尿器科などでの小手術に多く行われています。歯科・口腔外科領域においては、特に、治療に協力が得られない小児や知的障害者の歯科処置、小児の比較的短時間の口腔外科手術、また成人の親知らずの抜歯などを対象に行われています。(表)

日帰り全身麻酔の割合は年々増加しており、日本大学松戸歯学部付属病院では、年間全身麻酔症例の約3割(令和3年度)を占めています。

日帰り全身麻酔の適応

  • 歯科治療を理解できない、治療時の協力が得られない小児患者
  • 小児や知的障害者など入院が困難な場合
  • 比較的短時間の外科手術(過剰歯の抜歯、親知らずの抜歯など)
  • 歯科恐怖症で治療に対する恐怖心が強く、静脈内鎮静法でも治療が難しい方
  • 嘔吐反射(口に器具が入ると吐き気を感じる)が強く静脈内鎮静法でも治療が難しい方
  • ※静脈内鎮静法については、7月号をご覧ください。

専門の歯科麻酔科医が担当

日本大学松戸歯学部付属病院では、学会認定を取得した専門の歯科麻酔科医が日帰り全身麻酔を担当し、小児歯科、特殊歯科(障害者歯科)、口腔外科などの症例を中心に安全で快適な歯科治療を提供しています。

日帰り全身麻酔は、保険も適応されます(一部自費治療を除く)が、全身的に重度の疾患がない事や、帰宅時の付き添いが必要となることなどが実施の条件となってきますので、詳しくは担当の歯科医師または下記連絡先にご相談下さい。

■日本大学松戸歯学部付属病院☎047・360・7111(コールセンター)。