書の力第十九回   8月号

ふれあい毎日連載

香川(かがわ)松石(しょうせき)(1845-1911)『躍龍』1904年

136.8×67.3㎝ 紙本墨書 1幅

成田山書道美術館

たっぷりと墨を含ませた筆を躍らせながら辰年の元旦に書いたこの作品は、潤いのある墨色と、言葉のごとく龍が跳ね上がるような生き生きとした線質が印象的です。

佐倉に生まれた香川松石は、明治維新後、千葉師範学校などで長い間教壇に立ち、千葉の書教育の中心で活躍しました。同時に教科書の執筆も手がけ、多くの手本を遺しています。

当時教科書の執筆者は複数いましたが、端正かつ温順な書風で、書を始めたばかりの人が学びやすいと評判だった松石の教科書は全国的に採択されたことで知られています。現在も千葉は書教育が盛んな地域の一つですが、松石は千葉の書教育の礎を作った人物だといえるでしょう。(学芸員 山﨑亮)