Drリポート 207回

ふれあい毎日連載

医師の社会貢献活動 

脳神経・頭頸部外科学講座 准教授 丹羽秀夫先生

最近、当科では中国、韓国、ベトナム、フィリピン、米国出身で日本に居住されている患者さんが来院される機会が増えてきました。流暢な日本語を使用される方がほとんどですが、中には英語の方が良い、または英語のみのという方もいらっしゃいます。英語を日常的に使用するという視点から、今回は病気の事ではなく、当科の活動の一旦を記したいと思います。

カンボジアでの教育・医療支援

私は、ボランティアで米国のNPO法人TASSEL Cambodia (Teaching and sharing skills to enrich lives; https://www.tasselcambodia.org/)でカンボジアでの医療活動に参加しています。この団体は全世界の高校生、大学生がカンボジアの田舎の貧困地域で英語教育を行い、学校にもいけない子どもたちが英語を学ぶことで人生を豊かすることを目的に活動しています。通常は、時差の関係で各国の学生はオンライン授業を分担、夏休みにカンボジアへ実際に行って、自分の担当する子どもたちに直接授業を行うというものです。

私は英語を教える代わりに、貧困地域を周り、医療相談を行いました。日本とは医療事情が全く異なる環境ですので、私が出来ることは僅かですが、人生で一度も医者にかかったことがない人々に遭遇することにより、改めて日本の充実した医療制度の豊かさを実感するとともに、このような状況の人々の、何か手助けが出来ないかと自問しています。

この活動を少しでも日本から協力出来ないかと思い、仲間と共に非営利活動法人TASSEL Japanを立ち上げました。今後は趣旨に賛同される人を積極的に募集し、活動していこうと思っています。

救護医師を担当

今年、様々な意見が出ました2020 Tokyo Olymoicの空手でボランティアとして選手対応医師のまとめ役として参加いたしました。これは当院クラウンブリッジ補綴学講座(スポーツ歯科)の鈴木浩司准教授が日本空手道連盟医科学委員長であることから、ご推薦をいただき、参加させていただいたものです。

なぜ耳鼻科医師が空手の大会で救護医師を担当するのか、とお考えの方もいらっしゃると思います。空手の組手という種目では9割近くが、顔面のケガですので歯科、耳鼻科の需要が大きいのです。

今回のOlympicでもほとんどが、鼻出血、口唇裂傷と顔面のケガが多かったです。しかしながら、最終日の男子決勝戦をTVでご覧になられた方は、試合中に選手が倒れて起き上がらない状態が続き、最後に救護班が担架で選手を運んで行く様子を見て、驚かれたと思います。

会場は一時、騒然としましたが、脳震盪の診断で生命に問題ないことが確認され、この選手は最終的に表彰式にも参列することが出来ました。これは鈴木先生はじめ、救護班スタッフの機敏な動きと共に一緒に参加されていたERドクターの適切な指示によるものと感謝しています。尚、空手で脳震盪を起こすのは極めて稀なケースであることを付け加えておきます。

日常臨床で外国の方の英語での診察等に加えて、私がこのような活動に携わることが出来るのは、米国留学以後、日常的に英語に接する環境を構築できたからだと思っています。当院耳鼻咽喉科について3回に渡りお読みいただき、ありがとうございました。

■日本大学松戸歯学部庶務課☎047・360・9567。