最近の肝臓病について
その3 その他の肝臓病
日本大学松戸歯学部 内科学(消化器)講座 教授 山本敏樹先生
C型肝炎
C型肝炎は、血液製剤の使用に伴う感染や、戦後ヒロポンなどの薬物のまわし打ちなどで感染しました。感染後慢性化すると、多くは徐々に進行し肝硬変となり、さらに年率7~10 % 程度が肝癌を合併するといわれていました。
1992年からインターフェロンという注射による治療が始まりましたが、辛い副作用に耐えて治療を継続しても治る人はほんの一部でした。その後インターフェロンは改良され成績は改善しますが、それでも長期の治療を続けても治る患者さんは半数程度でした。
しかしその後、飲み薬が開発され、2014年の終わりころには飲み薬だけの治療も始まりました。そこからさらに治療薬が改良され、今では副作用も少なく、安全に治癒させることができる病気となっています。
C型肝炎も末期になるまで症状はほとんどありません。症状に気づいてから発見されても、治療が間に合わない可能性もあり、健康だと思う時にこそ積極的に検診をお受けになり、陽性の場合には精密検査を受けていただき、精密検査で感染が確認されれば、治療をお受けになるようお願いいたします。
アルコール性肝障害
アルコールの消費量は2000年以降減少傾向といわれていますが、アルコール性肝障害は増えてきている印象です。特に近年は女性の患者さんも多く、女性は男性よりも肝障害を起こしやすいことがわかっています。ストレスや不眠症のため飲酒される方も多くおられますが、「自分の意志で飲んでいるのだから自己責任」、といった厳しい社会的認識が一般になされています。治療には、精神科を含む多職種の協力が必要になります。
非アルコール性脂肪性肝炎( NAFLDやNASH )
あまり飲酒されない方の脂肪肝をNAFLDといいます。NAFLDはダイエットにより肝臓の脂肪が減少すると改善しますが、その状態が進行するとNASHといわれ肝硬変に進展してしまう病態となります。一部ではPNPLA3 やTM6SF2などといった遺伝子多型が発症に関連することがいわれており、酸化ストレスやインスリン抵抗性の増大、アディポサイトカイン、腸管からのエンドトキシンなどの関与が示唆されています。
NASHは、有効な治療法はいまだ確立されていません。近年肥満者は増えていないようですが、男性の約3割は健診時の超音波検査で脂肪肝と診断されており、国民病ともいえます。大切なことは、NASHに進展する前に早く脂肪肝を治すことで、食事療法と運動療法が重要といえます。
肝臓病の予防と対策
肝臓は「沈黙の臓器」です。自分は大丈夫などといった思い込みは捨てて、健康診断を積極的に利用して、肝臓の状態を血液検査で確認し、肝炎ウイルス検診や、脂肪肝の有無の確認のために超音波検査をお受けになることをお勧めします。
慢性肝炎や肝硬変はいろいろな原因で引き起こされますが、原因にかかわらず肝癌を合併することがあります。そのため、慢性肝炎や肝硬変の患者さんは、血液検査とともに定期的な画像検査の確認も必要となります。
体調の良い時にこそ是非、健康診断をお受けください。
■日本大学松戸歯学部付属病院
☏047・360・7111(コールセンター)
図:肝臓病の自然経過