DRリポート第227回 

ふれあい毎日連載

日本大学松戸歯学部 内科学(消化器)講座 教授  山本敏樹先生 

最近の肝臓病について その2 『B型肝炎』

山本敏樹教授

B型肝炎ウイルスの多くは母子感染で、一部は予防接種の際の注射のまわし打ちなどで幼少期に感染しました。幼少時の免疫は成人よりも不完全なために、ウイルスに感染していてもすぐに肝炎を発症しないといわれます。一般に青年期以降に肝炎を発症し、多くはその後、慢性肝炎に移行し、治療を受けないと肝硬変に進展することがありますが、なかには無症候性キャリアと呼ばれる、ウイルスが存在していても肝炎を起こさないまま経過する方もおられます。抗ウイルス薬が開発されるまでは、肝不全や肝癌を合併し多くの方が亡くなりました。アフリカや東南アジアなどの発展途上国に多いため、世界的には未だにB型肝炎による死者は多いと推測されます。

B型肝炎の治療

B型肝炎は、増殖する際に逆転写と呼ばれる方法を使います。これはエイズが増殖するときと同じ方法であったため、エイズの治療目的で開発された逆転写阻害薬が、1990年代にB型肝炎に使用されるようになりました。この薬は核酸アナログ製剤とよばれ、強力にウイルスの増殖を抑えることができましたが、当初使用されたラミブジンという薬剤は、長く服薬する間に耐性ウイルスが出現し、抑えられていたウイルスの増殖が再び活発になり、薬が効かなくなるという問題がありました。しかしその後、薬剤耐性をほとんど起こすことがない核酸アナログ製剤がいくつか開発され、この問題は改善しています。但し、B型肝炎ウイルスの感染メカニズムは複雑なため、現状ではウイルスを完全に体から排除することは難しく、毎日薬を服用しないとなりません。自己判断で服薬を中断すると、ウイルスが再活性化し、重篤な肝不全を起こす可能性があります。また、B型肝炎の患者さんが、関節リウマチなどの膠原病のために、免疫を抑制する治療を受けたり、がんに罹患して抗がん剤による治療を受けることで、ウイルスの増殖が活発になり、急性肝不全を引き起こすことが一部の患者さんでみられることがわかりました。患者さんの中には、ご自分がB型肝炎ウイルスに感染していることをご存じない方も多く、これらの治療を開始する前には、B型肝炎ウイルスへの感染の有無について検査が行なわれるように医療機関は指導されています。

B型肝炎の今後

1985年以降、母子感染予防対策が実施され、またB型肝炎には感染予防のためのワクチンがあり、2016年からは乳児にワクチン接種が行われるようになったこともあり、今後は感染者が減少し、将来的に撲滅が期待されます。しかし、慢性肝炎や肝硬変の患者さんは、現状では核酸アナログ製剤を毎日服用する必要があり、また肝癌を合併することもあるため、超音波検査などの肝臓の画像検査を定期的に受ける必要があります。

■日本大学松戸歯学部付属病院

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図:B型肝炎ウイルス感染の有無を調べる検査