安心・快適な歯科治療 その1
~静脈内鎮静法~
日本大学松戸歯学部歯科麻酔学講座教授 山口秀紀先生
「キーン!」「ガガガガ!」「チクッ!」、歯科治療の音や麻酔の注射を想像しただけで、歯科医院に行くことを躊躇してしまう事はありませんか。
ある報告によると、歯が痛くても治療が怖くて歯科医院に行けない、う蝕や歯周病を治したくても治療の事を考えただけで気分が悪くなってしまうという、いわゆる「歯科治療恐怖症」の患者さんは、現在、日本に約500万人いるといわれています。
歯科治療恐怖症の患者さんは、う蝕や歯周病が重度になってから歯科医院を受診されるケースが多く、その結果、麻酔の注射や抜歯など比較的侵襲の大きい処置が必要となってしまうことが少なくありません。
歯科治療に強い恐怖心や不安感を持つ患者さんに対し、治療時の緊張感や恐怖心を軽減し、快適な歯科治療を受けて頂く方法として「精神鎮静法」があります。特に、点滴から精神安定薬や少量の麻酔薬を投与する「静脈内鎮静法」は、治療中ウトウトと、うたた寝の状態になり、リラックスして治療を受けることができる方法です(写真)。
全身麻酔とは違い、意識が完全になくなることがないため、治療中も簡単な会話や「口を開けて下さい」「噛んで下さい」など歯科医師の指示に対応することも可能です。また「健忘効果(はっきりと覚えていない効果)」があるため治療中の嫌な記憶が残りません。長時間の手術でも実際より処置時間が短く感じられ、いつの間にか治療が終わっていたとおっしゃる患者さんも少なくありません。
さらに、口のなかに器具が挿入されると「オエッ!」となる嘔吐反射が強い患者さんも、この症状を軽減あるいは消失させることが可能です。(表)
専門の歯科麻酔科医による全身管理
日本大学松戸歯学部付属病院では、学会認定を取得した専門の歯科麻酔科医が、年間約1100例の歯科治療時の静脈内鎮静法を担当し、安全で快適な歯科治療を提供しています。
静脈内鎮静法は、外来での処置が可能で、保険も適応されます(一部自費治療を除く)。歯科治療に不安感、緊張感をお持ちの方、リラックスして治療を受けたい方は、ぜひ一度、静脈内鎮静法の応用について、担当の歯科医師に相談してみてはいかがでしょうか。
静脈内鎮静法が有効となる症例(表)
- 歯科治療に対する不安や恐怖心が強い方
- 歯科治療中に気分が悪くなったり、脳貧血や過呼吸を起こしたことのある方
- 口の中へ器具が挿入されると嘔吐反射が強く出る方
- インプラント治療や親知らずの抜歯など長時間の治療が必要な時
- 高血圧症や心臓病などの疾患があり、全身的な管理が必要な方
- リラックスして歯科治療を受けたい方
■日本大学松戸歯学部付属病院☎047・360・7111(コールセンター)