期待しないで見守って

子どもの広場 ゆうび

 新年度。不登校の子たちにとっては、気持ちがざわざわする季節かもしれません。昨年ひっきりなしに続いていた不登校相談は、ここひと月めっきり減っています。新年度を経てまた行けるようになるかもしれないという、期待があるからではないかと思います。


◆昌くん(17歳)中1から不登校。高校受験はせず自宅で過ごしていたが、昨年夏頃、ふと「高校行ってみようかな」と母につぶやく。通信制高校を受験し合格。4月から晴れて1年遅れの高校生となる。母は「制服(選択自由)や通学定期は今のところ買わない。お金のことでプレッシャーを与えたくない」と言う。そして自分にも。「お弁当作りが憧れだったけど、やめておこうかな。昌が行かなかったら、早起きしてせっかく作ったのにって思っちゃいそう。張り切らないでゆる~く行きます」と笑う。


◆萌さん(13歳)中学に入ってじきに不登校。学校には仲のいい友達も数人いて、今も休日には一緒に遊ぶ。勉強は好きじゃないけど美術は好き。家では絵を描いて過ごしている。熱心な男性の先生が担任。放課後毎日家に来るので、しんどくなり訪問はやめてもらったが、電話は頻繁に来る。ある日「来年、クラス替えで仲のいい友達と一緒になって、女の先生が担任になったら学校に来られるかな?」と聞かれた。


 高校に入れば。クラスが変われば。先生が変われば。こうした環境の変化が学校に復帰する後押しになる場合も確かにあります。ですが、どんなに環境が変わろうとそこが学校である以上、やはり合わないという子は多いです。元気に通える子もいますし、葛藤しながら通う子、再び不登校になる子。いろいろです。


 不登校の脱出口が見えると周囲の大人はつい張り切りがちですが、それは子どもへのプレッシャーにしかなりません。それが大きければ大きいほど、行けなかった時の子どものダメージは大きくなります。不登校生が「学校行ってみようかな」となったとき、こちら側が飛びつかない。お膳立てをしない。関心を持ちすぎない。「やってみたいならやってみたら」というくらいの気持ちで子どもの選択を見守りましょう。また今回がだめでもわたし自身の価値は何も変わらないということを親も子も再確認することです。


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