電話で少しの安心を

子どもの広場 ゆうび

ゆうびの電話が鳴ります。

「もしもし…落ち込んでいて、ゆうびに行って話したいけどなんか体が動かなくて…」ゆうびの大事な支援活動の一つに電話相談があります。普段仕事や事情でなかなか登園できない子たちの電話件数は決して少なくありません。

◆貴くん(31)は、大体女性スタッフの麻さんを指名します。話す内容は過去のこだわりや今の仕事の悩みなど。「今日も職場で怒られた。やる気が落ちてきた」「彼女が欲しいが容姿でしか人を選べない…」。   

叱咤激励され、背中を押して欲しいときは麻さんを指名。でも男同士、下ネタ交じりの恋愛話しで盛り上がりたいときは誠さんを呼び出します。もっと深刻な、自身の家族や出生について語りたいときは内さんなど、話したい内容によって指名する相手をうまく選んでいます。長いときは1時間近く話すことも。切り際「ありがとう。長々とごめんね」と心遣いのある貴くんです。

◆良くん(32)は、知的障害を持ちながら障害者枠で飲食店に勤務。仕事が終わった帰り道に毎日かけてきます。内容は仕事の量が多く大変だった事、同僚に優しくされて嬉しかった事など。そして「今日のゆうびのお昼ご飯は何だった?誰が来てる?」の質問は必ず。週5で働く良くんはもうなかなか登園できません。こうして電話することで昔馴染みのゆうびとの繋がりを感じているのかもしれません。

◆登園する前に電話をかけてくる子もいます。太くん(14)は「今って誰が来てますかー?」。ゆうびから徒歩5分ほどのバス停から歩きながらの電話です。「今日のお昼は何ですか?僕はお弁当ですけどね~」。もう着くなら着いてから話そうよ…と忙しいときなどは思ってしまいます。

しかし、太くんにとって、元気な声の裏にある緊張を和らげたり気持ちを切り替えたりする大切な5分間なのでしょう。

 電話は表情が見えない分、子ども・若者たちの気持ちを推し量るのには神経を使います。

言葉や息遣いの一つ一つから気持ちを読み取り、こちらの考えを伝える大切な支援です。今日もゆうびの電話が鳴ります。

(文=杉山 麻理江)

☎04・7146・3501 FAX同7147・1491(NPOゆうび小さな学園