先月「今冬は-5℃を下回るような強烈な冷え込みがあまりないものの…」と書いたのですが、原稿提出後しばらく経ってから、いわゆる最強寒波が到来。東葛地域も寒風吹き荒れ、時に雪が舞うなどし、記録的な寒さとなりました。
私の家の前に置いてある温度計もピーク時は最低気温-8.6℃を記録していました。そんな寒中も明けてからしばらく経ち、太陽の光に力強さを感じるようになり、日も長くなってきた今日この頃。土手を歩くと、菜の花がちらほらと咲きはじめています。
菜の花は千葉県の花です。余談ですが、私は宮城県出身であるものの、割と早いうちに今のところに引っ越してきたため、こちらの小学校を卒業しています。そのため運動会の準備体操といえば「なのはな体操」でした。
さて、この菜の花ですが、分類学上、ナノハナという種類の植物が存在するわけでは無く、アブラナ科アブラナ属に分類される植物を総称したものです。その中でも、土手や河川敷などにも広く野生化しているアブラナが、菜の花の代名詞的存在となっています。また同じ場所に生えている仲間のカラシナも、花はいわゆる「菜の花」です。
ところで、土手などに生える野生の菜の花の正体。じつは多くの人が勘違いしていたということが最近判明しました。これまではセイヨウアブラナとカラシナと考えられていたのですが、セイヨウアブラナの方は誤りで、アブラナであるというのです。
私もだいぶ前に指摘を受けて初めて気づき、以降、アブラナとセイヨウアブラナを見分けるべく、さまざまな栽培品種を取り寄せて栽培観察しました。結果セイヨウアブラナは、アブラナとキャベツの交雑で生まれた種類なので、やはりキャベツの面影がいたるところにあり、土手の菜の花とは雰囲気がずいぶん異なることが分かりました。
セイヨウアブラナを見る機会は少ないのですが、東葛地区周辺だと、かき菜(北関東で栽培)、のらぼう菜(東京・埼玉などで栽培)あたりがそれに該当します。一方のアブラナは星の数ほど栽培品種があり、見た目のバリエーションも豊富です。土手のアブラナは、その中でも、いわゆる「つけ菜」と呼ばれる品種群に近い感じです。
わぴちゃん(岩槻秀明)プロフィール
気象予報士。自然科学系のライターとして植物や気象など自然にまつわる書籍の制作に携わり、著書は20冊以上におよぶ。千葉県立関宿城博物館調査協力員、野田市史編さん委員会専門委員なども務める。宮城県生まれ野田市育ち。