「WALK ON THE EDGE」
佐倉市立美術館
10月28日(土)~12月24日(日) 佐倉市
佐倉市立美術館で今月28日(土)から12月24日(日)まで、佐倉市在住の陶芸家、和田的(あきら)(45)さんの作品展が開催される。和田さんは陶芸家として30代で早くも認められ、日本伝統工芸展での優秀賞や菊池ビエンナーレ大賞受賞など、数々の受賞歴を持ち、現代日本陶芸界の最前線で活躍する実力派の陶芸家だ。今回の展示は学生時代の作品から最新作までの磁器作品のほか、彫刻や版画など120点を一堂に展示、陶歴を辿る展覧会となる。
和田作品はエッジのきいたシャープな線と面で構成され、息を吞むような美しい光と影をまとったモダンで近未来を彷彿とさせる、建築物のようにも感じられる。白磁は制作の過程でたいへん神経を使う。原料の天草陶石をろくろでひき、乾いたら鋭利な刃物で削り出し、マチエールを付ける。作品の持つ陰影に目を奪われるが、白磁独特の跳ね返すような冷たさは全く感じられず、温かな質感が魅力だ。
日本橋三越に9月、開催中の個展会場に和田さんを訪ね、お話を伺った。
「陶芸に興味を持ったのは19歳の時。一生続けられる仕事を考えて陶芸を選んだ。その頃、師匠の上瀧勝治先生宅を訪問し、玄関に大きな白磁を見て、これだ!と感じた」と白磁との衝撃の出合いを語る。
「制作中は、白磁は極めて繊細なものなので、注意して、焦らないようにと、ここは慎重にと、自分に言い聞かせている」と。そこには作品完成までの息の抜けない真剣勝負の姿が目に浮かぶ。
和田さんは文化学院陶磁科卒業後、2007年にパリに3カ月滞在して銅版画の研修を受けた。「普段は白い立体作品を制作しているので、平面で色のある銅版画を勉強したいと思ったから」。滞在中に多くの美術館で作品を鑑賞、「芸術家たちは深く考えて創作している。哲学が凝縮されたものが美術だと感じた」と話す。
彫ることが好きで、彫刻なども制作している。「異素材を経験したことで、逆に陶芸の魅力が見えてきた」と広い視野で陶芸を俯瞰する姿が印象的だ。
陶芸の魅力について「生活の中で使えること。アートであり実用的であることの両面を追究している。例えば、花を生けないときはオブジェとなる。生活の中で楽しんでいただきたい」と話してくれた。
会期中、トークイベントや鑑賞会、ミュージアムコンサートなどが予定されている。
▼問☏043・485・7851。「佐倉市立美術館」佐倉市新町210。
■和田的(わだ・あきら)
1978年千葉県生まれ。文化学院陶磁科卒。陶芸家、上瀧勝治に師事。2005年独立。日本工芸会正会員となる。2007年文化庁新進芸術家海外研修員として渡仏。現在、佐倉市で作陶中。
■主な受賞歴
2011年第6回パラミタ陶芸大賞展大賞、2017年第27回タカシマヤ美術賞、第37回伝統文化ポーラ賞奨励賞、第64回日本伝統工芸展東京都知事賞、第7回菊池ビエンナーレ大賞。2020年日本陶磁協会賞ほか。