お薬のCMやパッケージなどで「用法・用量を守って正しくお使いください」という文言を目にしますね。薬はなぜ正しく使わなければいけないのでしょうか?
薬は本来「毒」で、その使用量を調節することによって、目的とする効果を発揮します。つまり、有害な作用がでない範囲で使用し、有益な効果を得ているのです。
薬の開発研究には、新しい作用機序を見つける段階と、それを人に使った時の安全性の研究の2つの段階があり、とてつもない時間とお金がかかっています。薬の箱やその中にある添付文書に書かれた一つ一つが開発者や研究者のいわば苦労の結晶なのです。それ故に、自己判断で用法・用量を守らず使用してはいけません。
ここまでは、当然のことと思うでしょうが、このような医学的・薬学的な観点だけでは、「大丈夫。いつもこうして使っている」と、経験を信じて使用されているような方を説得できないことがあります。
例えば、高血圧の治療薬のように一日一回だけ飲むものでは、身体の中で安定した濃度に保たれ、効き目が安定するまで4週間ほどかかります。1度や2度多く飲んだからと言って、すぐに重篤な副作用が現れるとは限りません。しかし、そのような経験が安全性を保証しているわけでは決してないのです。
話は変わりますが「医薬品副作用被害救済制度」というものをご存知でしょうか? 薬は、実験データに基づいて安全と思われる用法・用量を決めていますが、その毒性の発生の有無には個人差があります。また、発生頻度の低い副作用や長期間飲まないとわからない副作用は、多くの患者さんが使ってみて、初めてわかることもあるのです。
「医薬品副作用被害救済制度」は、防げない健康被害を受けた患者さんを社会が救済するための制度ですが、ここで大切な前提は「薬を正しく使っていても」ということです。ですから、決められた用法・用量を守らず使用した場合、この制度で救済されません。
『薬はなぜ正しく使わなければいけないのか?』そのことをいろいろな観点で考え、ご理解くださいますよう、よろしくお願いします。
担当薬剤師 澤田康裕
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