皆の笑顔がうれしくて。神輿、鳥居の修復・新調に携わる ー椎名匠店

なにつくってるの?東葛工場拝見

 10月1日に緊急事態宣言が解除され、現在、落ち着きを見せている新型コロナウイルス。昨年に引き続き、花火大会や祭りなど各地のイベントも自粛されていた。各地の祭りを盛り上げるものに神輿がある。老若男女問わずに担ぐ神輿は、きらびやかで華がある。


 我孫子市にある椎名匠店(しいなたくみてん)は、神輿や鳥居の新調、修復を手掛けている工房だ。昨年、今年とコロナウイルス蔓延の影響を受けたが、今は神輿の修復や新調の注文も入っている。


 代表の椎名正夫さんは、実家が大正時代から続く建具店を営んでいた。子どもの頃から木を使ったおもちゃなどを作るのが好きだったそうだ。一旦稼業を継ぐが、少年時代から興味を抱いていた神輿製作への夢があり、各地の神輿を見て歩くなど研究を重ねた。34歳の時、神輿製作に挑戦。それ以来40年、神輿づくりに取り組み神輿師として約80基を製作。椎名さんの作品は、千葉県指定伝統的工芸品に認定されている。


 椎名さんが神輿の新調、修復に携わった神社は、県内はもとより茨城県、埼玉県、東京都、神奈川県と多地域に渡る。近年の大仕事は、2019年に携わった水戸東照宮の社殿改修工事。また、東日本大震災で倒壊した大鳥居の新調も手掛け、高さ30㍍、幹回り85㌢にもなる樹齢250~300年の山武杉を使用した。設置時は、トレーラーを使って20人がかりでの大仕事だった。

神輿師の椎名正夫さん


 神輿は、神社仏閣の盛隆とともに1250年前の奈良時代が起源とされる。その種類は、江戸神輿、京神輿、相模神輿、田舎神輿と地域によって呼び名、形が違ってくる。一つの神輿は約5000個のパーツからできており、彫刻、飾り金具、金メッキ、糸ものなど計10職人が携わる。壊れても修復ができるように、ボンドなどの接着剤や素材の劣化が生まれる釘などは使用せずに木製のくさびで作られている。


 椎名さんは、「これからも質の良い木を使った流麗で堅牢な神輿をつくりたいです。神輿を納めて氏子(町内)の皆さまが笑顔で担がれている姿を見る時が一番うれしい時。製作している間も皆さんの笑顔を思い描きながら作業をしています」と語る。


 皆の健康と五穀豊穣を願う祭り。一日も早い祭りの復活が望まれる。


(取材・文=高井さつき/写真=高井信成)


■椎名匠店
我孫子市天王台6‐1‐12 ☎04・7182・0333