「布供養」の想いを込めて

ちば湾岸エリア

裂き織り作家 入山幸子さん

 

鎌ヶ谷市

「裂き織り」という織物をご存知だろうか。縦に張った糸に、横糸には布を細く裂いてひも状にしたものを使って新たな布を織る技法だ。「布を破いて織れば裂き織りです」と、笑って話すのは裂き織り作家の入山幸子さん(72)。

縦糸を張る作業が8割で織るのは2割とのこと。「織ってみないと自分の思い通りに行くかわからないところも魅力。とにかく織るのが楽しい」と話す。入山さんは福島県二本松市出身で豊かな自然に育まれて育った。故郷の風景を裂き織りで表現することも多く、その作品は優しくぬくもりがある。

元々手仕事が好きだったが47歳の時、東京ドームの展示会で青森県十和田市の南部裂織を体験してその面白さに目覚めた。その後、織りの教室に通い基礎的な技術を習得。着物の胴裏、様々な古布などを庭で育てた藍で藍染め、草木染で独創的な作品を作り上げた。

着実にキャリアを積み、2001年に千葉県展に初応募で入選、2012年に千葉県美術協会会員となり、以降毎年無鑑査で出展。自ら教室を持ち、裂き織り技術の拡大に貢献していたが、67歳の時に脳梗塞に襲われた。発見が遅れたら命に係わる状況だったそうだが、幸い発見が早く大事には至らなかった。

「これからの人生は神様がくれた余生だと思い、病で倒れた時にリハビリを兼ねて織った“観音様”がきっかけで布供養をしていこうと思った」と話す。「織った作品を、誰かに使ってもらって布の命を全うさせる。それが布の供養になる」。3月に行われたふなばし市民ギャラリーの展覧会では作品を希望する人に無償配布した。10月に千葉県立美術館で開催される県展に出展予定。

糸や布は誰かが持ってきてくれて買ったことがなく、自然と集まってくるという。たくさんの人たちの思い出の布に新たな命を吹き込む創作活動はこれからもますます輝きを増していくに違いない。

※県展では後期日程の10月5日~15日に作品が展示される。

▽問 irisa.08@jcom.home.ne.jp

※裂き織りの作業をする入山さん