繰り返す「変化」-真家英嵩 

レイソルコラム

 Jリーグ第33節福岡戦で久々のJリーグ出場を果たした真家英嵩選手。チームを勝利に導くことは叶わなかったが、以前との変化を感じさせる働きを見せた。湘南との2022年の最終節を前に真家はその「変化」について話してくれた。


 「ずっと、『守備でのハードワークからゴール』について取り組んできて、今は『ゴールまでもう少し』という感じがあります」


 真家選手のポジションはFW。ゴールを決めることが仕事だ。そして、その能力を磨き続けてプロになった。だが、ネルシーニョ監督は攻撃陣にも守備的貢献を求める。

 真家選手に先んじる細谷真大選手や小屋松知哉選手、マテウス・サーヴィオ選手は攻撃能力だけでなく、「守から攻」の質にも長けたアタッカー。たとえ、真家選手がどんな特殊能力を持とうとも、まず試されるのは守備での貢献だった。


 第34節湘南戦ではJリーグ初のスタメン出場。煌めいたピッチを駆け回る姿には明確な「変化」を感じることができたし、課題の守備から単独で好機も生み出すなど自身の感触も私たちに与えたインパクトも良かった。


 「スプリント回数はチームトップでした。これは明らかな変化でしたし、ボールも収められた。守備で貢献できていた感触もあって、試合に出られない間に取り組んできたことが試合の中で出せていたことを実感していました」


 ただ、感触とは別に60分間ほどのプレーの中で、「シュートは1本でノーゴール」という結果には悔しさを滲ませた。


 「…あとは『最後』。ゴールを決めるところ。自分がチャンスを決めていれば、別の結果になっていたはず。前半にあったDFと競りながらGKと対峙したチャンスの場面が象徴的でした。想定していたタイミングよりも速くGKが現れた。悔しい経験でしたけど、Jリーグでの『寄せ』の感覚を知れたことは自分にとって大きくて、実戦での速さや雰囲気を含め、試合に慣れることは大切なので…慣れさえすれば、ゴールはついてくる」


 実戦形式の練習から部分的に外され、練習場の片隅でシュート練習に明け暮れざるを得ない日もあった。チームのFWたちのプレーからあらゆるものを取り入れた。一番最後までジムに籠って体を磨いた。それでも、「ゴールまであと少し」という状況は変わらなかったが、たくましく前を見据えた。ネルシーニョ監督はそんな真家選手について次のような評価を与え、期待を公言していた。


 「私たちはこれまでのヒデの取り組みを見つめていました。一度ケガがあり、そこから復帰をして、次の出場機会を待ちわびながら、日々献身的に務めてくれていたので、『実戦でのパフォーマンスを見てみよう』とスタメン起用に至った。ヒデはしっかりとしたプレーの質や技術を持った選手で、今日もよくやってくれていた。それは彼の努力の賜物だと言っていいのではないでしょうか。今後J1の舞台で活躍するには課題もあり、さらなる努力が必要ではありますが、その期待に応えてくれるのではないかと私は思っています」


 その言葉を伝えると、真家選手は少し驚きながら「うれしいです」と笑顔を見せた。そして、来季へ向けてこう抱負を述べた。


 「こんなにも試合に出られないのは人生で初めてでしたが、選手として成長できた感じもしています。今年はもう試合はないですけど、今の良い状態を維持することがオフの目標です。良いオフと良いキャンプを過ごして、来季は開幕から爆発したいですね」


 「変化」を繰り返しながら手元に残ったものは一番の特技・ゴールという課題。真家選手が見せるべき、次の「変化」は「爆発」だ。


(写真・文=神宮克典)