不安定なシーズンを過ごしてきたレイソルが夏を過ぎて目を覚ましつつある。8月のリーグ再開から勝点を上積みして、居心地の悪かった順位表の下段部分から強かに浮上。
5人のDFと3人のMF、2人のFWで構成される現在のレイソル。最後尾のCBから最前線のFWまでをコンパクトに保ち、両サイドの幅を埋めながら素早くボールを奪い、少ない手数で相手ゴールを脅かす、攻守に集団的な戦い方が浸透。結果的に僅差での勝利が目立つが、局面での守備や攻撃の精度や強度の向上は顕著だ。
その守備の中心はスピードに富む大南拓磨選手とハイ・ヘッダーの上島拓巳選手、スペック豊かな古賀太陽選手からなる3CB。サイズや潜在能力、キャリア的にも豊かな可能性を持つ彼らの働きは大きい。
「彼らはまだ若いですが、試合を重ねるごとに自信を蓄えていると感じていますし、日ごろから話し合いをして、よく準備をしてくれています。周りからの信頼も得ながら、徐々に自分たちの立ち位置を確立しているのではないでしょうか。私はそう感じています」
ネルシーニョ監督はまず若き3CBに賛辞を送りながら、状況の好転に関しては、東京五輪期間中に行われたポジショニングの修正や意見交換などチーム全体の取り組みに言及した。
「チームが非常に良いリスタートを切れたのは中断期間中にチームがしっかりと準備をしてくれていたから。まだ降格圏に陥る、予断を許さない順位にはあるが、チームには『この先は上へ向いて戦っていこう』と伝えた。1つでも多くの勝点を掴むために」
瀬川祐輔選手や細谷真大選手から始まり、クリスティアーノ選手が連動―。鎬を削るFWたちの強い守備から全体が相手の行き先とスペースを塞ぎ、相手の自由とボールを奪い、戸嶋祥郎選手とヒシャルジソン選手が左右に展開、川口尚紀選手と三丸拡選手が縦を狙う。つい数秒前に守備者だったFWたちは一気に相手ゴール前へ突進する。その鋭さや迫力に相応しいゴール数はまだ奪えていないかもしれない。だが、ネルシーニョ監督はこう話した。
「状況が好転したのは、勝利が求められる試合で選手たちが期待に応えてくれていることに尽きます。1ゴールでも5ゴールでも勝利は勝利です。僅差での勝利が多いのは事実ですが、レイソルにとって意味のある勝利が続いている。得点差があれば、それはそれで良いのかもしれませんが、私はチームとして獲りきった勝利であると評価しています。なぜそれができたのかと言えば、それは選手たちが『勝利を懸けて戦う覚悟』にあったと私は思っています」
様々な変遷を経て辿り着いた、この「覚悟のシステム」をベースに、マテウス・サヴィオ選手や武藤雄樹選手、神谷優太選手、未だ真価を発揮しているとは言い難い新加入ブラジル・カルテットらがチームに新たなクオリティをもたらすことが期待される終盤戦。ピッチの至るところでほとばしる彼らの覚悟を見届けよう。
(写真・文=神宮克典)