柏レイソルの若きGK佐々木雅士選手は、去る9月U―21日本代表として欧州遠征へ臨み、U―21イタリア代表戦に出場した。
味方選手に起きた不運なボールロストからGKにとってはノー・チャンスの1失点を喫したものの、国際映像の向こうにはボールの動きに合わせて前後左右に動き、身振りでメッセージを伝え、遠くへ声を響かせる、いつもの佐々木選手がいた。フル出場で目立った破綻もなく試合をまとめてみせた。
「自分にとってはU―21代表での久々の出番でしたから、ワクワクした気持ちで臨めましたし、すべきことがはっきりしていた。相手にボールを持たれる展開でしたから、『今、勝つために必要なこととは?』と考えながらプレーしていて、守備陣と『間延びせずコンパクトに』と意思疎通しながら、何回かあったピンチも防げましたし、自分なりにはアピールはできたのではと思っています」
1年に渡って代表選出され続けたにもかかわらず「久々の出番」とならざるを得ない程に、この世代は個性豊かなGKが揃い、競争は過酷。だが、佐々木選手にはすぐにJリーグという実戦が控えていた。今回は水曜日の夜に帰国して、金曜日の午後には大阪へ出発した。
「今まで、代表の試合に出ずに帰国してJリーグという機会はあった。今回は試合に出てJリーグという日程でしたが、特に影響はなくて、むしろ、『佐々木は代表帰り』と見られる、また違う緊張感を感じていて、その良い緊張感を前向きな力に変えてプレーできました」
そのG大阪戦はスコアレスドロー。VAR判定によるゴール取り消しはあったが、安定した仕事ぶりでチームに貢献した。
「失点無く試合を終わらせられたのはポジティヴ。今日のようにピンチの少ない試合でも1回あったピンチを確実に抑えることは今後にも繋がるので、また集中力を切らさず守っていきたい。この結果は大切にしていきたい」
この5月から正GKに定着したが、そのシーズンも残りわずか。ホーム・日立台での初完封に絶叫した日もあった。雲行きの怪しい試合を立て直すセーブも、大量失点の後に「自分は元気です」と力なく答えた日もあった。だが、試合はすぐにやってくる。佐々木選手はそんな毎日の中での取り組みに言及した。
「試合に出続けられて、課題を探してしっかりと整理して、まとめることを続けて、改善して次の試合へというサイクルは構築できたと感じていて、また繰り返していけるように磨いていきたいし、まずはシーズンを良い形で締めることができたらと」
確かな手応えと希望を話してくれた佐々木選手。2つのチームで経験を積んだ今季の終わりに、「今描く理想のGK像」を問う。1年半前には同じ問いに、「チームを勝たせられるGK」と答えていたが。
「自分はGK。シュートを防ぐことが仕事です。色んなスタイルのGKがいますけど、『一番大事な時に確実にゴールを守れるGK』になりたいですね」
抽象的だった理想像から、よりフォーカスした理想像。こちらがたくさんの言葉を用いなくても、成長と充実が伝わることもある。
(写真・文=神宮克典)