日本記録にわずか1cm差の日本歴代2位(2m32cm)の記録保持者である戸邉選手。更なる高みを狙う鳥人ー戸邉選手は、子ども時代からスポーツ好きな少年だった。(この記事は2019年1月に掲載されたものです)
陸上との出会い
「野田中央小学生時代は、春は陸上競技、夏はサッカーや水泳、冬は(陸上の)クロスカントリーや駅伝などを練習する運動部と呼ばれる部活があり、小4からそこに所属したのが陸上競技との出会いです。サッカーや長距離でも代表に選ばれていたので運動神経はよかったと思います。走り高跳びを始めたのもその頃。その頃の成績は振るわず、市の大会では確か7位でした」
野田第二中学校に入ったら身長もグングン伸びる。顧問の教師が身長の伸びと体の動きに注目し、高跳び向きの才能を見抜ぬき基礎から指導。従来の素質が開花し、見事全国大会で優勝した。
「高校は、走り高跳びを専門で教える指導者のいる専修大学松戸高校へ進学し、3年の時2m23cmという高校記録を出しました。筑波大学では、自分で練習メニューを立て計画しトレーニングするという自主性を学びました。この大学は教員になる学生が多いこともあり、自分で考えて行動するという練習が今でも生きています」
現在は、筑波大学が運営する小学生中心の陸上クラブ、つくばツインピークスに所属し、主に大学の競技場で練習。月に一日以上は、野田市の清水公園に隣接する野田市総合公園の陸上競技場で練習したり、自宅近くの江戸川の土手をジョギングしている。
記録へのこだわり・探求心
昨年は、国内外約15試合に出場した。陸上競技は集中力を鍛えることが重要だが、彼の集中力の高め方は一試合一試合に目標を設定することから始めるという。
「昨年、2m32cm(日本歴代2位)を飛ぶ前に2m30cmを超えた試合が3回ありました。あの記録は、直ぐに自己ベストは出るだろうなという感覚の中で出た記録です」
一つひとつの試合にテーマ、目標を立て、それをどうクリアしていくかを考えながら飛ぶ。『今度は踏み切りに入るやり方をいつもとは違うやり方にしてみよう』とか。毎回同じ飛び方ではなく、試合に出る度、試行錯誤している。
「もちろん狙っていく試合というのもあって、勝負に徹しないといけない試合が1年に1つか2つあります。それ以外の試合は勝負に向けたテストのような気持ちで飛んでいます」
2020年まで残り一年。今季も海外遠征、国内大会などの重要な試合を控えている。
「今年は2月のヨーロッパでの室内大会から試合スタートです。3月頃に帰国し、それからカタールのドーハで行われる4月のアジア選手権、10月の世界選手権に向けて体力、技術づくりをします。オリンピックの出場は、代表選考会が2020年6月なのでそこで決まると思います。東京オリンピック(陸上競技は7/31~8/9)の年は、僕は28歳。選手として一番いい時期。新しい国立競技場でよい結果を残せるようにがんばりたいです」
(文=高井さつき/写真=高井信成)
●とべ なおと/1992年生まれ、26歳。中学3年時に全日本陸上競技選手権大会での優勝を皮切りに高校3年時にインターハイ優勝、筑波大学3年時に日本陸上競技選手権大会優勝。2018年アジア競技大会で3位と数多くの国内外の大会で活躍。現在つくばツインピークス所属。194cm、70 kg