奏風(そうふう) 秀世(ひでよ)記念

ちば湾岸エリア

松野藝文館

『松野奏風没後60年記念作品展』

四街道市

日本画家、松野奏風(1899~1963)とその子息の秀世(1936~2002)が描いた「能画」を多数所蔵する四街道市美しが丘の松野藝文館を訪ねた。

ユネスコ世界無形文化遺産に登録されている古典芸能「能楽」を主題に、形だけでなく、そこに演者の心をも描きこんだ「能画」を松野父子は二代にわたり精緻な筆致で描いてきた。二人が精魂込めて描いた作品約300点を所蔵するのが同館だ。

受付に飾られている色鮮やかな「羽衣」の陶板(原画 秀世)

奏風の没後60年記念の作品展を6日から開催する。閑静な住宅街にある同館の1階と2階で約20点を展示。「奏風と秀世の作品の保存を目的に2010年に開館。多くの方々と美しいものを共有したい」と語るのは、奏風の孫にあたる同館代表の長谷川三香さん(57)。長谷川さんの母で奏風の娘の長谷川紗衣さん(91)が四街道市に在住していた縁でこの地に開館したという。館内は清々しい杉の香りと静謐な空気が漂う。能が好きな人はもとより能の事がよくわからない人でも長谷川さんが詳しく説明してくれるので理解が深まり、鑑賞することが出来る。

東京生まれの奏風は15歳で日本画家、月岡(坂巻)耕漁に師事、その後能楽に関する作品を描いてきた。同館では昭和2年(1927年)仙台市の個人宅にあった杉板戸に初めて揮毫した「鏡板式老松図」(個人蔵・11月24日より展示)を収蔵している。奏風が画家の視点で舞台を鑑賞し、美術愛好家の心で描いた数々の作品は能楽の普遍的な魅力を伝えている。

そんな父の背中を見て育った秀世は東京藝術大学日本画科を卒業後、画家として活動しながら、渋谷区松濤にあった観世能楽堂の老松図(現在は銀座シックス内)や熱海市のMOA美術館能舞台の鏡板に老松図を揮毫している。芸術と文化の館、松野藝文館のゆったりと落ち着く空間で心ゆくまで芸術の秋を楽しんでみてはいかがか。

10名以上で来館の際は要連絡、駐車場なし。

▼『松野奏風没後60年記念作品展』。前期10月6日~11月12日の金土日曜。後期11月24日~12月24日の金土日曜。(展示品の入れ替えあり) 開館時間10時30分~17時。

▽入館料200円。

▽「松野藝文館」四街道市美しが丘1-19-20。

▽問☏043・377・7188。

トップ写真:「金地十二佳月扇面散屏風」と長谷川三香さん