DRリポート 229回

ちば湾岸エリア

突然死する心臓血管病 ~家族を守るために何をすべきか~

         日本大学松戸歯学部 内科学(循環器)講座教授

秦 光賢(はた みつまさ)先生

秦 光賢先生

比類なき高齢化社会

  わが国は現在、約5人に一人が65歳以上の高齢者、40年後には、現役世代1.3人に対して、定年後の高齢者一人の割合になると予想されます。本邦の平均寿命は男性約80歳、女性約87歳ですが、健康寿命は約10年も短く、晩年は介護が必要となります。

ここで大きな問題は、高齢者の介護の源となる現役世代において、年々動脈硬化性疾患の発症頻度が増加傾向にあるということです。 動脈硬化性疾患の中でも死亡率、突然死の危険が最も高いのが急性心筋梗塞です。近年、本疾患の死亡率は約40%で年間4万人が死亡しており、うち3万人以上が病院到着前死亡です。

狭心症と心筋梗塞

狭心症は冠状動脈に変性した悪玉コレステロールによる狭窄ができて、その先の心筋への血流供給が低下するために、胸痛や息切れなどの症状がでます。この状態がさらに深刻化したものが急性心筋梗塞で、冠動脈内に蓄積した動脈硬化性プラークが破裂して血栓を形成して血管内腔を閉塞し、その先の心筋に全く血流が途絶えてしまうのです。早期に治療を行わないと心筋は約6時間で壊死し、場合によっては発症直後に不整脈がおこり突然死するのです。(図1)

心筋梗塞の危険因子

動脈硬化の本体は脂質異常症で、それに拍車をかけるのが高血圧や糖尿病、運動不足(肥満)、喫煙といった因子です。脂質には、LDLと呼ばれる悪玉と、HDLと呼ばれる善玉があり、これらは血管の中におけるゴミと掃除機の関係なのです。

LDLは血管の壁に蓄積され、黄色の破裂しやすい不安定なプラーク(動脈硬化の塊)となって増加していきます。一方、HDLはこのLDLを血管内から排除し、肝臓に運んで処理をしてくれています。これらのバランスLDL/HDL比をしっかり調整することにより動脈硬化性疾患発症予防が可能です。

血管内視鏡

LDL/HDL比を1.5前後に調整する方法をAggressive Lipid Control Therapy (ALCT) と呼び、当院心臓血管外科外来で実行しています。このALCTを行っている患者とLDL/HDL比が3.0以上の患者の冠動脈内膜を内視鏡で比較すると図2のようにALCTでは美しい白色状態ですが、LDL/HDL比の高い患者では不安定な黄色プラークの存在がわかります。

運動、禁煙、内服薬が重要

動脈硬化進展抑制とプラーク退縮のために、LDL/HDL比を1.5前後に維持するよう努力します。運動が最も効果的で、一日30分を2回程度、すこし汗ばむ速度でのウォーキングがよいとされます。

次に禁煙です。タバコをすうとHDLは増加しません。運動、禁煙、次に魚中心の食事によりHDLを有効に増加させることができます。ALCTではLDLが60台、LDL/HDL比が1.5以下に維持されています。実はこれらの値は、赤ちゃんの値に近いものであり、つまりこの赤ちゃんの値を維持することにより血管壁をベイビースキンのように“すべすべ”に維持することができるというわけです。

突然死を予防し、いつまでも家族のために若さを維持しながら、年をとるようにがんばりましょう。

■日本大学松戸歯学部付属病院

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