今回ご紹介するのは『名付けようのない踊り』です。世界的なダンサーである田中泯。『たそがれ清兵衛』(02)の出演をはじめ俳優としても有名ですが、彼の本質は踊りです。
1945年に生まれ、66年ソロダンス活動を開始。78年にパリ秋芸術祭『間―日本の時空間』展(ルーブル装飾美術館)で海外デビューを飾る。以降、独自の踊りのあり方「場踊り」を追求しながら、1985年、40歳の時、山村へ移り住み農業を礎とした日常生活をおくる田中泯は野良仕事で身体を作り、その身体で踊ると決めた―。
2017年8月から2019年11月まで、ポルトガル、パリ、東京、福島、広島、愛媛などを巡りながら、3か国、33か所で踊りを披露しました。
その道中を撮影したのは『メゾン・ド・ヒミコ』(05)への出演オファーをきっかけに親交を重ねてきた犬童一心監督。「生産性や効率のみを重視する現代社会の、歯止めになろうとする田中泯の姿を、生き方のヒントとして、観る人に投げかけたい」と語る犬童監督はどのように映し出すのか。
同じ踊りはなく、どのジャンルにも属さない田中泯の「場踊り」。生きることそのものが表現だと感じるような稀有な映像体験をぜひキネマ旬報シアターでご体感ください。
(大野健志郎)