『ある画家の数奇な運命』11月7日~20日まで上映

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 今回はこの秋おすすめの作品『ある画家の数奇な運命』をご紹介いたします。

 ナチ政権下のドイツ。少年クルトは叔母の影響を受け、芸術に親しむ日々を送っていた。ところが、元々繊細だった叔母は、やがて精神のバランスを崩し、強制入院させられた末、安楽死政策によって命を奪われてしまう。終戦を迎え、成長したクルトは、東ドイツの美術学校に進学。そこで、エリーと出会い恋に落ちる。だが、元ナチ高官の彼女の父こそが、叔母を死へと追いやった張本人だった。その残酷な運命に気付かぬまま、2人は結婚。時を経て、東のアート界に疑問を抱いたクルトは、自由を求めてエリーと共に西ドイツへ逃亡する。そこで創作に没頭するクルトだったが…。

 本作は「現代最高峰の画家」とも称されるゲルハルト・リヒターをモデルに、激動のドイツを生きた芸術家の半生を描いた作品です。ただの伝記映画かと思いきや「何が事実か事実でないかは絶対に明かさない」というユニークな条件のもと制作されたそうです。芸術家らしいエピソードですね。監督は「善き人のためのソナタ」のフロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク。時代の闇と芸術家の魂に触れる一本をスクリーンで是非。           

(新井貴淑)