「元祖玉屋」の花火師の伝統を守る 

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中嶋勝さんと三人の息子たち

 花火の打ち上げ時の「たまーやー!」「かぎーやー!」は江戸時代、活躍した花火師を称える掛け声だ。現在、その名を冠するのは東京都の「宗家花火鍵屋」と八千代市の「元祖玉屋」のみ。創業は1915年、「元祖玉屋」は同市保品ののどかな環境に作業場がある。

 コロナ禍で花火大会が無くなってしまった時期は一般客の「プライベート花火」などを受け付け、再び夜空に花火を打ち上げる日を待っていた。昨年あたりから通常の夏祭りが開催されるようになり、今年は例年通り大忙し。工場では6月半ば、今夏打ち上げ予定の花火製造の真っ最中。伝統の手仕事を親子4人で守る「元祖玉屋」を訪ねた。

 工場の日乾場(にっかんば)には乾燥中の花火が並ぶ。「花火玉は均一にクラフト紙で貼り重ねていかないときれいな球体にはならない」と、代表の中嶋勝さん(69)。大きな玉ほど貼って乾かす作業を何度も繰り返す。一つひとつが手仕事で、根気のいる作業だ。

一つひとつ手作業で作り上げていく

 中嶋さんたち花火師は、製造だけでなく打ち上げも担当する。「八千代ふるさと親子祭」では終盤、スポンサーの社名が浮かぶ仕掛け花火が季節の風物詩にもなっている。音楽と花火の競演、ミュージックスターマインも見どころだ。11月2日(土)の土浦全国花火競技大会への参加も予定(荒天の場合は3日・または9日)。「花火を上げるのは一瞬だが、一年かけて準備をしてきた。見ていただく方々に喜んでもらえる花火にしたい」。

 2003年の朝ドラ「こころ」の放映時、弟子入り希望の電話が朝から晩まで鳴り止まず、仕事にならなかった」と笑う。しかし時代とともに担い手が減り、廃業していく他社も多い中、元祖玉屋には頼もしい3人の息子たちがいて、花火師を継承している。「他の職業を考えたことはない。今こうしてこの仕事に就けていることが幸せだと思っている」と長男の勇介さん(41)。

 老舗の伝統、努力と革新、家族の絆が良い仕事を生む。次男の良太さん(39)、三男の望さん(37)の親子4人がプライドをかけて作り上げた花火が、今年も真夏の夜空で花開く。彩り豊かに夢を描き、魂を揺さぶる演出で見る者に感動を与えてくれるに違いない。8月が終わっても花火師の仕事は続き、またすぐ来年を見越した花火作りが始まる。

※写真提供:八千代市

◆「第50回八千代ふるさと親子祭」。8月24日(土)。19時から8千888発の打ち上げ花火。※荒天の場合は順延、翌日も荒天なら中止。模擬店、キッチンカー、灯篭流し。県立八千代広域公園及び、八千代市総合運動公園多目的広場。駐車場なし。

▽問☏047・483・1711(八千代ふるさと親子祭実行委員会事務局/八千代商工会議所内)。