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誤嚥性肺炎って怖いのでしょうか

医療最前線Drリポート

DRリポート250回

日本大学松戸歯学部有病者歯科検査医学講座 准教授 田中陽子先生

 2025年度は団塊世代がすべて後期高齢者に達します。そして出生数が減少する一方医療的ケアが必要な子どもの数は増加しています。誰もが地域で生活していく共生社会の実現のために、人口構造、地域の医療ニーズの増加や複雑化といった急激な変化に対応できる適切な地域医療提供体制の構築は必須です。
要介護高齢者や医療的ケア児者の多くは歯科医療機関への通院が困難です。そのため本学付属病院では2025年4月より訪問歯科医療の提供を主軸とした地域医療連携包括センターを設置いたしました。

地域連携のなかでの歯科の役割とは

 日本における死因は長らく悪性腫瘍、心疾患、脳血管疾患の順でしたが、2011年に肺炎(細菌性肺炎+誤嚥性肺炎)が第3位となりました。高齢者における誤嚥性肺炎が多く占めるようになり、2017年から死因に誤嚥性肺炎が単独で追加され、2022年には第6位となっています。
細菌性肺炎とは、呼吸によって細菌が侵入して炎症が誘発される市中肺炎ともよばれるもので、誤嚥性肺炎とは、飲食物や口腔常在菌の混じった唾液が気管に入ること(誤嚥)によるものです。特に要介護高齢者における誤嚥性肺炎は入院加療が繰り返されます。細菌性肺炎に比べて予後不良で死亡率が高く、退院後の生存時間1年が50%、5年が13%であるとの報告があります。

誤嚥性肺炎の最大の原因は嚥下機能の低下(図1)

 嚥下機能の低下は、脳血管障害、認知症、心疾患などの基礎疾患のみならず、加齢による筋力低下も大きな要因です。加齢は、①嚥下機能で中心的役割を担う喉頭の位置の低下(図2)、②喉(咽頭)の収縮力の低下、③食道入口部の開大不全などを引き起こします。①は嚥下反射の惹起遅延による直接的な誤嚥に、②や③は食べ物の咽頭部の残留による嚥下後誤嚥につながります(図3)。


 そしてあなどれないのが、唾液誤嚥です。口腔常在菌は、腸や皮膚の常在菌と同様必要なものである一方、歯周病の原因となる細菌(歯周病原菌)は呼吸器疾患を重症化させます。世界中を恐怖に陥れた新型コロナウィルスの宿主細胞(人などの生物体の細胞)への侵入を手助けするのも歯周病原菌です。そして唾液による誤嚥性肺炎の原因となるのも歯周病原菌です。
ある病院では、誤嚥性肺炎による入院患者において、口腔内細菌数の多さと死亡退院に相関関係が認められたと報告しています。つまり、地域連携における歯科の役割の一つは誤嚥性肺炎の予防だと言えます。

 誤嚥性肺炎はなぜ怖いのでしょう

繰り返されることに加えて、ひとたび誤嚥性肺炎の診断がつくと、多くは絶飲食で抗菌薬の投与となります。細菌同定が困難で入院期間も長くなりやすく、その間に認知機能は約2.4倍の速度で、筋力は約10~15%程度低下すると言われています。高齢になるほど回復力が低下します。従って、誤嚥性肺炎を予防することが大切です。まずはお口の中を奇麗にすることから始めてみませんか。


■日本大学松戸歯学部付属病院☏047・360・7111(コールセンター)☏047・368・6111(代表)