TAKORASUさん
「とにかく楽しむ」ことを忘れずに 千葉市
NHKのEテレ「ムジカ・ピッコリーノ」の世界観デザインを始め、独自の世界を細密画やオブジェで表現する、千葉市在住のアーティストTAKORASU(本名 小出 誉幸)さんを訪ねた。
映像制作、本の装丁、作曲までも手掛けるマルチなアーティストだ。見るほどに引き込まれる独特の世界には、大人も子どもも魅了される。
「実は絵を描き始めたのは、大学生の頃から。大学で漫画研究会に入って背景のトーン貼りのとき、力が強すぎてうまく出来なくて。じゃあ、おまえカケアミな、と手書きでの作業をさせられて」と振り返る。しかし、それが今のペン細密画作品に生かされているのだそう。
大学の政治経済学部を卒業後、商社へ入社。「機械系の商社で、ネジや釘を扱っていた。それが今のスチームパンクデザイン(アナログな機械や部品、蒸気機関などを組み合わせた、レトロな雰囲気のデザイン)に役立っていますね」と語る。
その後退職、専門学校でデザインを学び、卒業後、数々のコンペで受賞し、画集を出版。それを見た出版社から、『骸骨ビルの庭』(宮本輝著・講談社刊)の装丁を持ち込まれる。
東京国際アニメフェア(現Anime Japan)で受賞した作品がテレビ局の目に止まり、そこからNHKの仕事に繋がっていった。「振り返ってみたら、お仕事になっていた、という感じですね」と、卓越した才能を持ちながら、気負いがない。
「こんな風なので、いつも仕事をしているという感じがしない」と笑う。最も大切にしていることは「とにかく楽しむこと」。
世界中が閉塞している今、アートを仕事にしたいと思っている人たちへのアドバイスとして、「今の状況を新しいことを勉強し、作品を作り、自分の中を開拓するチャンスと捉えると、コロナ禍が終わった時に、他の人よりも3歩はリード出来る」と、語ってくれた。
何事もポジティブに捉えて、未知の世界観を表現して見せてくれるTAKORASUさん。次はどんな不思議世界を私たちに見せてくれるのか楽しみだ。
樹脂粘土などで制作した立体作品が並ぶTAKORASUさんの仕事部屋