執刀医選びは慎重に  

名戸ヶ谷病院 脳卒中センター
名戸ヶ谷病院 脳卒中センター・センター長 脳神経外科部長 井上 靖章

柏市内で唯一『脳神経外科医直通の脳卒中ホットライン』を持つ名戸ヶ谷病院脳卒中センターでは、毎日多くの患者さんを診察。その経験から、皆さんに健康な生活を続けて頂けるよう、地域の脳卒中を減らすための情報を連載。

 脳神経外科で治療する病気というとどのようななものをイメージするでしょうか。脳腫瘍(のうしゅよう)や脳卒中などが有名なため、後遺症に悩まされたり命に関わったりするものを想起する方も多いかもしれません。実は、私たち脳神経外科医が治療するのはそうした恐ろしい病気だけではないんです。


 顔面に電気が走ったような強い痛みを感じる三叉神経痛(さんさしんけいつう)や、顔面がビクビク勝手に動いてしまって煩わしい顔面神経痙攣(がんめんしんけいけいれん)などの病気もまた、脳神経外科で治療をします。これらはともに決して命に関わる病気ではないのですが、想像するだけでとても辛いですし、日常生活が苦しくて精神的に滅入ってしまう患者さんもいらっしゃいます。治療法には薬の内服やボトックスの注射、ガンマナイフなどがありますが、完全に治療するには手術が必要となることが多いです。とは言えど、顔がビクビク動くのは辛いですが、脳の手術を受けるのもとても怖いですよね。


 この手術は微小血管減圧術(びしょうけっかんげんあつじゅつ)と言って、原因となる脳神経を圧迫している小さな血管を神経から引き離すだけのシンプルな治療です。シンプルがゆえに大雑把に行っても80%前後の治癒率が得られるのですが、本当に原因となる部位をすべて視認して丁寧に処置することで治癒率は100%に近づきます。そして、皮膚をたくさん切って頭を大きく開けても手術はできるのですが、鍵穴手術と言って皮膚を切るのは4㌢程度、頭蓋骨を開けるのは2㌢程度の小さな傷で安全に行うこともできます。つまり、それほど経験のない脳神経外科医でもそこそこの手術はできてしまうのですが、技術と経験のある術者だと小さな傷で高い治癒率を得ることができる、ということになります。もちろん後者のほうが合併症率が低いため、安心して治療を受けることができます。


 どんな手術も執刀医選びが最も大切です。手術を受けるか決める前に、少し勇気を出して、主治医にその手術の経験数に加えて成功率と合併症率を尋ねてみてください。手術に自信のある医師は親身に答えてくれると思います。


 社会医療法人社団蛍水会 名戸ヶ谷病院脳卒中センター(東武アーバンパークライン 新柏駅から徒歩約7分)
☎04・7167・8336