子どもたちが安心して未来を選択できるように 社会福祉法人 ワーナーホーム 大久保夏樹さん 

夢叶え人

 医療的ケアを必要とする子どもも大人も安心して泊まれる、遊べる、働ける場所として、2023年7月に柏市高田にオープンした「すくすくハウス」。

すくすくハウス


 施設長を務める大久保夏樹さん(44)は、養護教諭や看護師として20年以上、医療的ケアを必要とする子どもたちの育ちを支えてきた。


 活動を続ける中で痛感したのは、孤独や負い目を感じている家族の多さだ。


 「日常のケアは、ご家族、主に母親がしています。昼夜問わずに行われる数時間おきのたんの吸引や、酸素のモニターチェックなど、24時間緊張と不安が伴います。家族がコロナやインフルエンザになってしまったら身動きもできない。自分たちも年を取っていく中で、成長していく子どもをいつまでケアできるのかという不安もある。親御さんが少しでも休めるよう、安心して預けてもらえる施設をつくりたいと考え、2020年、医療的ケア対応「すくすくハウス」設立プロジェクトを立ち上げました」


 「すくすくハウス」が目指すのは、医療的ケア児と地域のみんなが自然に交流できる場所だ。


 「最近耳にすることが多い『障がい理解』という言葉については、主張するほどバリアができてしまうのではないかと少し懸念しています。障がいと一口に言ってもそれぞれ違い、配慮してもらいたいことも人それぞれ。色めがねで見ないでほしい。一緒に居られれば気づくことがあるはずで、自然な交わりから相互理解につなげていきたい」


 施設内にあるサンドイッチカフェ『ペジーブル』で接客や販売を行うのは入所者たち。キッズスペースが広く、こだわりのコーヒーやホットサンド、ジェラートがリーズナブルで美味しいと人気だ。

ペジーブルのコーヒーとジェラート

 今後は地域住民も利用できるシェアファーム(市民農園)なども整備し、近隣の人たちとの交流をより深めていく予定だ。


 「施設へ預けることへの罪悪感を感じる父母もいらっしゃいますが、子どもたちが、私たちスタッフだけに見せる顔もあるんですよ。家族と離れてお迎えのバスに乗った瞬間にやったー!なんて言う子もいます。家族の想いと、子どもたち個人の想いが違うのも当たり前。みんなが主役の人生を支えていきたい」


 そう話す大久保さん。優しい笑顔が印象的だ。

 今回取材してみて「色めがねで見ないで」という言葉がとても心に残りました。無意識に自分とは違う世界の話と捉えていたかもしれないと自省すると共に、何かをしてあげなくちゃいけないと思うこと自体が差別なのかな、とも考えました。
 知ることで自分で考えるようになり、行動するきっかけになるということを学ばせてもらいました。

(取材=松原美穂子)