今は一年で一番寒い時期、散歩道もすっかり冬の装いです。野鳥たちは元気いっぱいですが、昆虫の姿はほとんど見えず、全体的に茶色が目立つ枯野のような風景となっています。今回は、そんな散歩道の中で見つけやすい「カマキリの卵」にフォーカスを当ててみたいと思います。
俗に「カマキリの卵」と呼ばれる大きな塊は、正確には卵鞘または卵のうといいます。1つの卵鞘の中には100~300個ほどの小さな卵が入っており、春が来て暖かくなるといっせいに孵化をして活動を始めます。しかしカマキリが生きる世界はとても厳しいもので、無事に成虫になれるのは300匹に1匹いるかどうかと言われています。
しかも生き残りをかけた厳しい競争は卵のうちから始まっています。卵鞘は鳥にとってはごちそうなのです。わたしが観察していても、鳥に食べられてえぐられた状態になったものをたくさん見かけます。
ちなみに観天望気のことわざで「カマキリが高いところに卵を産む年は雪が多い」というニュアンスのものがあります。一説には雪に埋もれないよう高いところに産むからと言われますが、本当の所どうなのかは不明です。
カマキリの卵鞘は、種類によって形がちがうので、それを知っておくと楽しいものです。最もよく見かけるオオカマキリはぷっくり膨らんだような形をしています。水辺に多いチョウセンカマキリ(単にカマキリともいう)は枝などに細長く貼りつく感じで、縦に2本の溝が入ります。
コカマキリはチョウセンカマキリに似ていますが小ぶりで、倒れた木の樹皮の隙間や石の影など、地面に近いところに産む傾向があります。
ハラビロカマキリは色が濃いめで、きゅっとのびた1本の出っ張りがあります。
ところで近年、カマキリの世界にも外来種が入りこんできています。それが中国原産のムネアカハラビロカマキリです。2010年に福井県で初めて記録されて以降、日本各地で見つかっています。ハラビロカマキリによく似ていますが、胸が長く、裏返して見るとピンクの部分が目立つなどのちがいがあります。
卵鞘もハラビロカマキリに似るものの、より白っぽく、つきかたも異なります。東葛地区でも今後見かける機会が増える可能性があります。
わぴちゃん(岩槻秀明)プロフィール
気象予報士。自然科学系のライターとして植物や気象など自然にまつわる書籍の制作に携わり、著書は20冊以上におよぶ。 千葉県立関宿城博物館調査協力員、野田市史編さん委員会専門委員なども務める。宮城県生まれ野田市育ち。