2月3日の節分までは、一年のうちで最も寒い「寒の内」です。今冬は-5℃を下回るような強烈な冷え込みがあまりないものの、それでも散歩道はすっかり真冬の装いです。
今の季節の昆虫は、その多くが本格的な冬越しの態勢に入っています。卵や幼虫、蛹の姿だけではなく、成虫の状態で冬越しするものも意外に少なくありません(成虫越冬)。テントウムシやカメムシ、アリなどは成虫越冬する昆虫の代表と言えます。
夏の人気昆虫であるカブトムシとクワガタムシ類。カブトムシは幼虫での越冬が基本ですが、クワガタムシ類の中には成虫越冬する種類もあります。コクワガタもそのひとつで、一部が朽ち木のすき間などで冬を過ごします。
チョウ類も成虫越冬する種類が意外に多くいます。東葛地区で見られるチョウの中では、キタテハ、ヒメアカタテハ、ルリタテハ、テングチョウ、キタキチョウ、ルリシジミ、ムラサキシジミ、ムラサキツバメ、ウラギンシジミなどが成虫越冬組です。
これらは鳥などの天敵に襲われないよう、葉陰などでじっとしているため、その状態を散歩がてらに見つけるのは簡単ではありません。キタテハなど一部の種類は、真冬でも比較的暖かい日が続くと、陽だまりをひらひらと舞うことがあります。
バッタやキリギリスの仲間では、ツチイナゴとクビキリギスの2種類が成虫越冬組の代表です。これらも真冬の陽だまりにひょっこりと姿を見せることがあります。
さらに驚くことに「成虫越冬するトンボ」もいます。それがホソミオツネントンボです。名前のオツネンは「越年」という意味です。
雑木林周辺に多いイトトンボの仲間で、木の枝に擬態し、冬の間は枝先でじっとしています。決して珍しい種類ではなく、数は多いのですが、擬態の完成度が非常に高いため、風景に完全にとけこんでしまい、じっと止まっている間は、まず見つけられません。
もし散歩道で越冬中のホソミオツネントンボの姿に気づけたら、それは大発見と言っても差し支えないと思います。
なお、フユシャクの仲間(冬限定で出現するシャクガ科のガの総称)のように、冬に積極的に活動する昆虫もいます。それはまた今度、折を見て取り上げたいと思います。
わぴちゃん(岩槻秀明)プロフィール
気象予報士。自然科学系のライターとして植物や気象など自然にまつわる書籍の制作に携わり、著書は20冊以上におよぶ。千葉県立関宿城博物館調査協力員、野田市史編さん委員会専門委員なども務める。宮城県生まれ野田市育ち。