今やすっかり人気花、ヒガンバナの仲間 

わぴちゃんさんぽ
ヒガンバナ(左)とシナヒガンバナ(コヒガンバナ・右)

 秋の彼岸の頃に咲くヒガンバナ。初秋の散歩道ではおなじみですが、かつては死人花(シビトバナ)や幽霊花(ユウレイバナ)と呼ばれ、「植えると火事になる」と言われるなど、どちらかいとえば忌み嫌われる存在でした。これには2つの理由が考えられます。


 ヒガンバナは有毒植物で、特に球根(正式には鱗茎という)には強い毒があります。この毒の力でご先祖様を守るべく墓地に植えられてきたからというのが1つめの理由です。


 また古くは飢饉で切羽詰まったときにヒガンバナの球根の毒を抜いて食べたと言います。そのため平時に人々が手を出さないよう、あえて不吉な花扱いしたのではないかというのが2つめの理由です。

 しかし時代の経過とともに、これらの言い伝えを信じる理由はなくなりました。それどころか近年は、ヒガンバナの群生地は観光スポットとして人気があります。ホームセンターなどで球根が流通するようになり、庭で楽しむ花としての地位も確立しつつあります。そんなヒガンバナにはいくつかの種類があります。

 まずはシナヒガンバナ(コヒガンバナ)。ぱっと見ヒガンバナそっくりですが結実します。また花期が少し早く、この記事がお手元に届く頃にはすでに花盛りかもしれません。

 次に白っぽい花を咲かせるシロバナヒガンバナ。じつはこれはヒガンバナの白花ではなく、黄色い花を咲かせる別な種類(ショウキズイセン)とシナヒガンバナの雑種です。黄色と赤をかけあわせて白っぽい花が咲くとは何とも不思議なものです。ちなみにヒガンバナの真の白花はギントウカと呼ばれています。しかしギントウカは幻の花で未だ実物を見た人はいません。

シロバナヒガンバナ(左)とショウキズイセン(右)


 ヒガンバナで花に白い縁取りが入る株が稀にあり、ニシキヒガンバナと呼ばれています。またワラベノカンザシというものもあります。花茎の高さが十数cmととても小さく、花色は若干白っぽい色をしています。ワラベノカンザシは除草剤の影響を受けてできた変種と考えられています。

ニシキヒガンバナ(左)とワラベノカンザシ(右)

 その他、わたしは未見ですが、八重咲きなど、新しい栽培品種が続々と登場しているようです。

 この秋、ヒガンバナについていろいろ調べながら散歩してみると面白いかもしれませんね。


わぴちゃん(岩槻秀明)プロフィール

気象予報士。自然科学系のライターとして植物や気象など自然にまつわる書籍の制作に携わり、著書は20冊以上におよぶ。 千葉県立関宿城博物館調査協力員、野田市史編さん委員会専門委員なども務める。宮城県生まれ野田市育ち。

わぴちゃんホームページ