秋の空を代表する雲のひとつが「ひつじ雲」です。小さな白い雲がたくさん並んだ状態で、これを羊の群れに見立てその名がつけられました。澄んだ秋空の青をバックに雲の白色がよく映え、見応えがあります。
ひつじ雲は気象学的には高積雲と呼ばれます。より高いところに浮かび、「いわし雲」、「うろこ雲」の愛称で親しまれている巻積雲と似ていますが、個々の小さな雲の大きさが異なります。ひとつの目安として、腕をのばして小指を立て、小さな雲のひとつに当ててみたとき、指の中に完全に隠れれば巻積雲、指からはみ出るくらいの大きさなら高積雲となります。
高気圧と低気圧が交互に通過する秋は、低気圧が近づいてくるタイミングで高積雲が現れやすく、だから秋は高積雲、つまり「ひつじ雲」が目立つと言われています。ただ高積雲自体は年じゅう現れており、特に秋限定というわけではありません。
雲の分類は、まず基本となる10種類に大きく分けた後、さらに詳しく特徴を記す方法として「細分類」の名前が用意されています。 高積雲の細分類には17種類(層状雲、レンズ雲、塔状雲、房状雲、ロール雲、半透明雲、すき間雲、不透明雲、二重雲、波状雲、放射状雲、蜂の巣状雲、尾流雲、乳房雲、穴あき雲、波頭雲、荒底雲)があり、これは基本10種類の中で2番目の多さです。それだけ表情豊かな雲なのです。
細分類の中からいくつかピックアップしてみましょう。
半透明雲は雲が比較的薄く、太陽や月、上の青空が透けて見える状態です。波状雲は雲がしま模様に並んで見える状態、放射状雲は遠近効果の影響で雲が放射状に広がって見える状態です。蜂の巣状雲は雲に小さな穴がたくさん開いて、まるで蜂の巣のようになったものです。尾流雲はしっぽのような筋がシュッとのびた状態です。穴あき雲は高積雲の広がっている場所に大きな穴が開き、そこに筋のような雲ができた状態です。
他にも、光の当たりかたで雲に陰影ができたり、朝日や夕日に色づいたり、他の種類との組み合わせで個性的な姿になったりと変化が大きく、見ていて飽きないものです。ぜひ散歩がてら秋空に浮かぶ「ひつじ雲」の表情をいろいろ探してみてくださいね。
わぴちゃん(岩槻秀明)プロフィール
気象予報士。自然科学系のライターとして植物や気象など自然にまつわる書籍の制作に携わり、著書は20冊以上におよぶ。千葉県立関宿城博物館調査協力員、野田市史編さん委員会専門委員なども務める。宮城県生まれ野田市育ち。