とても身近でありながら謎多き花、タンポポ

わぴちゃんさんぽ
在来種のタンポポ (左からカントウタンポポ、シナノタンポポ、トウカイタンポポ)

 タンポポは春の散歩道ではおなじみの野花のひとつです。どこにでも生えていて、とても身近でありながら、じつはまだ分かっていないことも多い、とても謎多き存在でもあります。今回は東葛地区で見られるタンポポの種類の多様性にスポットライトをあてて紹介します。

 タンポポの種類は、大きく在来種、外来種、雑種の3つに分けられます。

 在来種はいわゆる「日本のタンポポ」で、東葛地区にはカントウタンポポ、シナノタンポポ、トウカイタンポポの3つがあります。どれもよく似ていますが、総苞片(俗にがくと呼ばれている部分)の形状が異なります。

 外来種は海外(主にヨーロッパ)から入ってきた種類で、俗にセイヨウタンポポと呼ばれています。しかし海外には何千種類ものタンポポがあり、日本でセイヨウタンポポと呼ばれているものがどの種類に当たるのかは未だよく分かっていません。おそらく1種類ではなく、何種類も混じっている可能性が高いと考えられます。

 外来種にはもうひとつ、アカミタンポポと呼ばれるものがあります。これはタネの色が赤っぽい種類で、東葛地域でもよく見かけます。雑種は、在来種と外来種の交雑によってできたタンポポです。現在はタンポポの交雑がかなり進んでいて、身近なタンポポの大半がこの雑種と考えられています。

 かつて「総苞片が上向きなら在来種、そり返っていれば外来種」といわれていました。しかし最近は、総苞片のそり返り具合が多様で、その見分け方が通用しなくなってきています。これはおそらく、外来種・雑種のバリエーションが増えてきているからなのでしょう。

 それからタンポポの中には白っぽい花を咲かせるものもあります。その代表がシロバナタンポポです。シロバナタンポポはもともと西日本のタンポポでしたが、人の移動とともに分布が広がり、今は東葛地区でもいたるところでその姿を見るようになりました。

 また最初に紹介したカントウタンポポなどの在来種の中にも、白っぽい花を咲かせる個性を持った株があります。  

左:シロバナタンポポ 右:ウスジロタンポポ(カントウタンポポの品種)

 タンポポはここに書ききれないくらいたくさんのネタがあります。ぜひ散歩道でタンポポを見つけたら、いろいろ観察したり調べてみたりしてくださいね。


わぴちゃん(岩槻秀明)プロフィール

気象予報士。自然科学系のライターとして植物や気象など自然にまつわる書籍の制作に携わり、著書は20冊以上におよぶ。千葉県立関宿城博物館調査協力員、野田市史編さん委員会専門委員なども務める。宮城県生まれ野田市育ち。

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